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第13話 待ってるよ
しばらく俺は夢見心地でお兄さんの腕枕で寝ていると、お兄さんは俺のおでこにキスをしてから言った。
「今晩はここまでにしておこうか…」
「…うん、そうだね」
お兄さんは自分から言ったのに、急に俺を抱きしめた。俺が、もっと一緒にいたい、とでも言った方がよかったんだろうか。
「ねぇ、今日は本当にありがとうね、お兄さん。素敵な夜だったよ」
リップサービスでも何でもない、俺の本心だ。
「俺も楽しかったよ。でも…また会いたいよ」
「本当?…また会ってくれるの」
その場限りの楽しみがお決まりなのに、お兄さんの言葉は嬉しかった。
「じゃあ、レオ君がいい時に連絡してよ。俺はいつでもいいからさ」
「ありがとう…お兄さん」
俺はお兄さんの首に手を回して、思いっきり唇を吸った。喜びのキスだ。
着替えを済ますと、お兄さんは電話番号が書かれたメモをくれた。そして一階のエントランスまで送ってくれた。
「車、呼んだから…あっもう来てるな。こういう時は早いんだから」
お兄さんは、外に停まっている車を気にしながらも俺を引き寄せてお別れのキスをした。
「レオ君…連絡待ってるからね」
俺の返事を待たずに、お兄さんはまたキスをした。
俺は返事の代わりに、お兄さんの手を掴んで俺のお尻に触れさせた。するとお兄さんは笑いながらお尻を一回だけ鷲掴みした。
「じゃあね。気をつけて帰るんだよ」
「うん、ありがとう」
俺はお兄さんが呼んでくれた、タクシーに乗った。
自宅のマンションに着いて料金を払おうとしたが、運転手は恭しく、ご契約者様より頂戴いたしますので、と言った。うん?…そうかタクシーじゃなくてハイヤーだったんだ。さすが坊ちゃん、ありがとうございます。運転手は車を降りて、外側から俺がいる後部座席の扉を開けてくれた。そして丁寧に一礼をして帰って行った。乗る前は全く気づかなかったけど、よく見るとその車には防犯灯もなく車体に社名もなかった。
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