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第19話 名前

 カップ麺を食べ終わると、なんかほっこりして、さぁやるぞって感じにはならなかった。お兄さんもそんな感じかなと思ったら、まめまめしく、後片付けをしてくれた。で、ペットボトルのミネラルウォーターを持ってきてくれた。 「ありがとう。喉渇いてたんだ」 「だろ?…口移しで飲ませてあげようか」 「今はいいよ」  俺は一気にペットボトルを傾けて飲んだ。 「ふうん…俺のレオになったら、なんかクールになってさ…僕のレオだったら、恥ずかしそうに口を開けてくれるんだろうな」  いや。僕でも口は開けない。ううん。開けたかな?さっきは俺でも僕でもどっちでもいいって言ってたくせに。やっぱり僕キャラが好きなんじゃないか。 「じゃあ、もう一度言ってよ」 「何を?」 「口移しで飲ませようかって」 「一回しか言わないんだよ」  拗ねた。なんか可愛いというか、優しくて、セックスが上手くて、ちょい意地悪ですぐ拗ねる。でも甘えるとご機嫌になる。 「じゃあ、俺がお兄さんに百回キスしたら、口移ししてくれる?…あっそれより、俺が口移ししてあげるよ。ねぇ、お口開けて」  ほら。ちょっとニヤけてる。 「ねぇ、今のはどっちだよ。俺はさ、素のレオに触れてみたいんだよ」 「俺は、俺だよ。ほら、咽せないでよ」  俺はそう言って、水を口いっぱいに含むとお兄さんに飲ませた。口の端から漏れて、お兄さんの首元が濡れてしまった。俺は濡れた首元を舐めると、お兄さんのスイッチが入った。口移しが嬉しかったのか、お兄さんは俺の大好きな乳首攻めをしてくれた。あぁ、お兄さんの愛撫、大好き。そして、もう一度フェラでいかせてくれた。ちょっとまた思い出し笑いをしているのは俺の気のせいか…。  いや、お兄さんは笑ってる。 「もう、また笑ってるんだから」 「ごめん。だってさ」 「もう…お兄さんの記憶からその部分だけ抜き取りたいよ」 「だめだよ。大切な俺のレオの記憶だ。本当に可愛いんだから」  お兄さんの頭の中で、またあのシーンが再生されているんだろうな…困ったもんだ。   でも、そうか、ずっと残るのかお兄さんの中に、俺がレオだとしての記憶…。 「ねぇ…俺さ。本当は紫乃っていうんだ…」  また、俺の乳首にキスをしようとしていたお兄さんは少し驚いて、俺の顔を見た。   「えっ?名前がシノっていうの?」 「そう…」 「ねぇ、どんな字を書くの?」 「ムラサキに、ノ、はひらがなの元になった漢字の」  俺はお兄さんの上に被さって、乃の字をお兄さんの胸に指で書いた。 「綺麗な名前だね」  お兄さんはそう言って、乃の字を書いた俺の指を掴んで、自分の乳首に触れさせた。  俺の名前を聞いても、綺麗な名前とだけいうお兄さん。大抵の人は、女みたいな名前だ、と言うのに。  俺は自分の名前が嫌いだった。

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