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Love triangle
桜咲く……というよりも大分散ってしまった頃。無事に星針 学院の2年生へと進級を果たした皆元 理玖 は、早速新たな問題に直面していた。どうして普通の高校生活を送りたいというささやかな望みを叶えることが、こんなにも困難に満ち満ちているのだろうか。いっそ己の運命を呪いたくもある。
空を仰いで降り注ぐ陽光に目を細めていると、傍らに立っていた上級生――黒川 吾珠 に急に強く腰を抱き寄せられた。またか、と呆れるよりも速く、目の前で吾珠にガンを飛ばしていた理玖の幼馴染である新入生――白山 恵瑠 がまさに晴天の霹靂といった表情で吠えた。
「おっ、お前……!何を軽々しくりっちゃんに触れてるんだよ!!」
「えーる、上級生にそういう口の聞き方は良くないぞー。あと、いい加減にりっちゃんて呼ぶのやめろって言ってんだろ」
至極慣れた様子で恵瑠を窘めながら、腰にまとわりついている吾珠の腕を外しにかかる。吾珠も見慣れない新入生をからかいたかっただけなのか、抵抗なく手を離してヒラヒラと振って見せた。
「そうだよー?新入生くん。俺じゃなかったら体育館裏に呼び出されちゃうところだ」
「黒川先輩も煽らないでください。面倒事が増えるんで」
「理玖はいつになったら俺のこと吾珠って呼んでくれるのかな?」
「呼びませんよ、一応先輩なんで」
「そうだそうだ!誰がお前なんか先輩と認めるもんかっ」
明後日の方向から果敢に会話に割って入り、なおも吾珠を牽制しようとする恵瑠を見て、こいつはいつになったら自分をDealとして迎えるのを諦めるのだろうかと、軽い頭痛を覚えて眉間を抑える。
丁度そこへ天の助けか、試合終了のゴングのごとく、学生ならば身に染み付いているはずの予鈴の音が鳴り響いた。
にも関わらず、一触即発の空気を漂わせ続ける二人を交互に見遣ると、巻き添えを食らって新学期早々遅刻扱いになる方が嫌だと、新しい教室に向かうべく理玖はくるりと踵を返した。
「……もう面倒くさいから勝手にやってろ」
「りっちゃん?!」
「あーあ、おっこらっせたー」
「誰のせいだよ!」
なおも言い争う声を背中に受けながら、平穏な高校生活の夢がガラガラと音を立てて崩れていくのを半ば諦めた心の内で聞いた。
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