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第2話
その仄暗い、何を考えてるか分からない目はきっと一生忘れないだろう。
「弟扱いしないでくれる?…俺とアンタは他人なんだから」
そう言った統乃は迎えに来た彼女と共に雨の中、歩いて行った。
……他人、そうだ…分かっていた。
血は繋がってないし、支倉とは何の関係もない他人になった今、兄弟でもなんでもない。
「東金くん?どうかした?」
「…いえ、何でもありません…すぐ戻ります」
俺は顔を隠すように俯きながらカフェに戻った。
…後で店長に謝ろう、変な態度取ったし…
これは雨のせいとでも誤魔化そう。
目元を覆う袖が濡れている。
…やっぱり俺、勘違いしていたんだ。
統乃がいつも俺の後に着いてくるから、俺をさっちゃんと呼ぶから、俺が辛い時はいつも側にいたから…統乃に好かれてると勘違いしていた。
………俺は、こんなに嫌われていたなんて知らなかった。
遠く離れていても、両親に捨てられても口に出さなくても…弟だけは俺の家族だと思っていたから借金があっても今まで頑張れたんだ。
一人ぼっちだったんだな、最初から…
統乃も同じ学園に通っているが、一言も話した事はない。
統乃は有栖院学園の生徒会会計だから一般生徒と違い滅多に顔を合わせないし、すれ違っても一度も目を合わせない。
俺が支倉の関係者だとバレるわけにはいかないだけかと思ったが、今なら嫌いだからなんだと分かる。
学園が終わり、カフェに直行した。
店長は雨に濡れた窓を見て憂鬱な顔をしていた。
「はぁー、早く梅雨終わらないかなぁー…お客さんも雨だと来ないし」
「看板入れてきます」
「ん、お願いね」
カフェを出て看板を中に入れようとしたら見知った人がいた。
体を縮こまらせた統乃だ。
…雨宿りだろうか。
またなにか言われるかもと無視しようとして足を止める。
振り返ると服が雨で濡れていて体が僅かに震えていた。
カフェに戻り、しばらくしてまた外に出た。
何も言わず統乃の頭の上に被せた。
「ぶっ!……何?」
「風邪引くから」
統乃は驚き、俺を見た後イライラしたように低い声で言った。
俺はポーカーフェイスで何でもない事のように言ってカフェに置いていた自分のタオルを渡した。
…少しでも戸惑いがあると統乃はまたいらないと突き返すだろうから。
統乃は俺から目を逸らし舌打ちした。
「関係ない人間はほっといてよ」
「関係なくない」
「!?」
「この場所はカフェの屋根があるから統乃はカフェのお客さん」
「……バカなの?」
またバカにされた…
でも、この前のバカにした態度ではなく、ちょっと困ったような声の気がした。
統乃はもう俺と話す気がないからか俯いたまま動かないからカフェに戻った。
きっとまた彼女の迎えを待っているのだろう。
……それにしても、なんで統乃は傘を持ってかないのか…
雨の日が続くと天気予報士が言っていたのに…
そういえば、統乃は昔から自分以外信じない性格だったっけ…それにしても天気予報ぐらい信じたらいいのにと風邪を引かないか元兄は心配だった。
カフェからチラッと窓を見ると、彼女と一緒に帰る統乃の姿があった。
…彼女の事はちゃんと信じてるのかな?
子供の頃、俺は肝試しに行こうと子供執事で友達のしょうちゃんと統乃と一緒に暗い夜道をこっそり抜け出した。
しょうちゃんは泣き虫で「帰ろうよぅ、旦那様に怒られちゃうよぅ」と泣きながら訴えていたが俺は無視して家の敷地内にあるデカイ倉庫に入った。
統乃はいつも無言でニコニコしながら着いてくるからしょうちゃんがいなくても全然怖くなかった。
幽霊を見た事なかった俺は一目でも見てみたかった。
そして先頭に立つ俺は白い物体が揺れているのに気付いて悲鳴を上げて後ろにいる統乃にしがみついた。
「ゆっ、ゆゆ幽霊だぁ!!」
「幽霊?じゃあ本当にいるんだ」
「…あれ?」
俺と統乃が幽霊怖いと連発しているとしょうちゃんの気が抜けた声がした。
一番しょうちゃんが泣き喚くかと思っていたのに冷静なしょうちゃんの声にしょうちゃんの方を見る。
しょうちゃんは壁に吊るされて揺れるものを掴んでいた。
「これ、布ですよ…幽霊はいませんよ」
「え…あ、違っ…幽霊は」
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