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第7話

気付きたくなかった…こんな思い、ずっと苦しいなんて思わなかった…報われない恋なんて… 目が覚めて目の前に見えたのは赤く跡がついた両腕だった。 この跡はしばらく消える気がしないなと優しく撫でる。 統乃に抱かれて、とても悲しかった。 男に抱かれたからとか弟に抱かれたからとかじゃない。 統乃は俺を彼女の代わりにしたんじゃないかとずっと思ってる。 それを言われたから統乃は図星だと思いあんなに怒ったのではないかと… 俺は犯されながらずっと、思ってた…もし俺が他人で女だったら統乃は振り向いてくれたのだろうか。 …そう考える時点できっと俺は統乃を… でも、それは絶対に報われないだろう… 統乃は女好きだし、何より支倉家の跡取りだ…きっとこれは最後の神様がくれた悲しいプレゼントなのだろう。 起き上がると当然統乃はいなかった。 彼女と仲直りしに行ったのかな…ズキズキと痛む。 統乃に近付かなければ良かった、そしたら統乃を弟としてずっと見れたのに… 統乃に彼女の代わりをしてほしいと頼まれた時も断れば良かった。 強く断れなかったのは罪悪感を言い訳にして統乃ともっと近付きたかったのかと今なら思う。 体が怠い…もう少し、休もうと瞳を閉じる。 まだ、中に統乃がいるような不思議な気持ちになった。 嫌いならほっとけばいいのに、ほんのりシャンプーのにおいがした。 ー統乃視点ー 子供の頃からアイツを兄だとは思っていなかった。 最初は少しは兄だと思っていたが、弱いし危なっかしいし…守る対象になるのに時間は掛からなかった。 初めての精通はアイツを想ってシて…それから性の対象として見るようにもなった。 そしてアイツは俺に何も言わず居なくなった。 目の前が真っ暗になった。 なんで、置いていくの?一言言ってくれれば守ってあげたのに… 裏切られた気分で、悔しくて悔しくて…苦しかった。 そして密かに嬉しく思った。 兄弟という鎖に縛られて上手く動けなかったが、ようやく手に出来る。 男同士とか関係ない…一生俺が作った世界で守ってあげられる。 しかし同じ学園にいるのは知ってるのに佐助は見つからなくて、仕方なく焦がれる想いのはけ口にいろんな女と遊んだ。 一瞬気の迷いで兄を好きになっただけなのかと、考えて彼女を作る事にした。 そんな時運命の悪戯か、佐助と思いもしなかったところで出会った。 嬉しかったが、口にするのは置いていかれた事への恨みで素っ気ない言葉だった。 内心嫌われたかとビクビクしたが、佐助はやっぱり優しかった…兄だとまだ思ってるのがイライラしたけど… そして、気がついたらよく雨宿りするようになった。 佐助がいない日は翔が迎えに来るまでずっと佐助を待っていたりしていた。 そして彼女と会う時、ずっとカバンの中に入れていた佐助のタオルを眺めていて彼女に嫉妬された。 …本人に会えたし、もう面倒になり別れ話をしたら殴られた。 これで済んで良かったのかも…しつこいとストーカーする女もいるし… 佐助がいた事にずっと気付いていて、声を掛けて来ないからこちらから声を掛けた。 そして俺は良い事を思いついた。 結果は見ての通り、散々だったけど… 佐助を騙す罪悪感でいっぱいのデートだった。 口から出るのは正反対の言葉…言いたくないのに、本当の事が言えない臆病な言葉。 結果…佐助を無理矢理犯し、傷付けた。 他人になっても佐助から弟が消えないと気付いたから… もう会えないし、顔も見たくないだろうから後処理を済ませて部屋を出た。 すっかり外が暗くなり、ポケットに入れているスマホのバイブが震える。 …なんかもう、どうでも良くなった。 泣きたいのに涙が出ない。 「ごめん、さっちゃん…」 夜の街を歩き続けた。 まだ言葉も話せない赤ん坊の頃、親に捨てられ孤児院に引き取られた。 その孤児院が特殊だと知らず、一般的にひらがなを覚える年齢の時には既に漢字が書けていた。 この孤児院はエリートを育て金持ちの跡取りに引き取られる子が多かった。 俺も支倉家に引き取られたが、跡取りは既にいた。 保険で俺を引き取ったと今日から父親になる男は言った。 …事情とかどうでも良くて適当に頷いていた。 自分を捨てた親と重なり、大人は信用出来ないといつも冷めていた。 そんな俺の前に、彼がやって来た。 金持ちに生まれたのに威張らず、すぐに俺を受け入れてくれたさっちゃんを見て初めて薄暗かった視界が明るく照らされた。 さっちゃんだけが、俺を… スマホを取り出し、画面を見ると翔から心配のメールや電話が掛かってきていた。 相変わらず親父からはない。 …俺を信用してるのか、それとも…家を継げば誰でもいいのか…後者のような気がする。 そうだ、だからさっちゃんを追い出したんだ…絶対に許せない。 翔に短めのメールを送り、電源を落とす。 いつも暖かく俺を引っ張ってくれた手、相変わらず暖かかった…さっちゃんの体もとても暖かく気持ちがよかった。 …でも、心は冷え切っていた。 本当は分かっていたから、こんな事してはいけないと… でも、我慢出来なかった。 憎んでもいいから、俺で満たされてほしかった。 …これが俺の歪んだ愛情表現だ。 受け止めて…逃げて…俺の前からいなくなれ…ずっと一緒にいたい…好き…嫌い… 「たすけて、さっちゃん…」

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