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第2話②

 軽く汗を流して、ベッドルームへ向かう。  彼用のバスローブを羽織ったことに不満が出るかと思ったが、ヴィルフリートは軽く眉をひそめただけで、招くように右手を差し伸べてきた。  ――こういうとこ、知ってても騙されそうになるよなぁ。  いかにもスパダリ然とした堂々たる態度に、琉斗(りゅうと)は小さく肩を竦めてみせる。ヴィルフリートは琉斗の(てのひら)を取るなり、性急に伸し掛かってきた。膝に当たる彼の分身は既に反応を示しており、琉斗の「レッスン」を心待ちにしていたことがわかる。  我慢が効かないのはそのまま、ヴィルフリートが性的に未熟であることの証だった。 「……ん……」  抱き締められ、大きな手に身体中をまさぐられて、吐息が漏れる。ヴィルフリートの纏う香水はややスパイシーで、異国情緒を感じさせられた。  興奮に突き動かされるまま身体を繋げようとするのを押し留め、琉斗は自らの股間に手を伸ばす。見せ付けるようにしてやや腰を浮かし、軽く扱くと、下半身に慣れた快感が広がった。  同時に、ヴィルフリートがゴクリと喉仏を上下させる。  ――レッスン開始だ。  うっすらと笑いながら、琉斗は小首を傾げた。 「咥えられるか?」  まずは、相手を悦ばせるためのステップだ。前回の反応から、ヴィルフリートが琉斗の男性器に拒否を示すどころか、ひどく興奮していたことは間違いない。わずかに躊躇いを見せはしたものの、ヴィルフリートは比較的素直に琉斗のペニスを口に含んだ。  生暖かい感触に包まれ、琉斗の唇からは自然と期待に満ちた声が漏れる。 「は、ぁ……ッ」  しかし、そこから先が続かない。舌を使って、何とか琉斗を奮い立たせようと努力しているらしいのはわかる。が、同じような物理的刺激が繰り返されるばかりでは、それ以上反応しようもない。  ちょっと考えてから、琉斗はヴィルフリートの肩を軽く叩いた。行為を止められた形のヴィルフリートは、整った顔を不満げに歪めたが、琉斗は構わず、目の前の均整の取れた巨躯を押し倒す。  エメラルドの切れ長の瞳が驚愕に見開かれるのと同時に、琉斗はヴィルフリートの下半身に手を伸ばした。そのまま前を寛げてやると、既に半分以上勃ち上がったペニスが、圧倒的な存在感と共に鎌首をもたげる。 「ッ、おい……っ」 「――見てろよ」  制止の声をキレイに無視して、琉斗はヴィルフリートの分身を咥え込んだ。その途端、ひどくセクシーな声を上げて、ヴィルフリートが仰け反る。 「アァ……ッ!」  琉斗だって、アナルセックスに興味があっただけで、男のモノを咥えるのは初めてだ。しかし、要は自分がされて気持ちいいことをしてやればいいのだろう。  軽くお手本を見せてやるつもりで、自分でも驚くほど自然と眼前にそそり立つペニスを口に含んだ琉斗だったが、見た目は完璧なイケメンが自分のテクニックで頬を染め、切なく喘ぐ様子に、どんどん気持ちが(たか)ぶってくる。 「……アッ、は……アァ……ッ」  わざと音を立てて舐めたり、裏筋に舌を這わせたりする間にも、ヴィルフリートは見る間に硬度を増していった。先走りの粘液が溢れて、琉斗の口内に苦味が広がる。  その先端を重点的に舌の先で弄ってやると、不意に両手で頭部を抱え込まれた。 「!」  驚く間もなく、喉の奥まで巨大なペニスに犯された琉斗は、反射的に瞳を潤ませる。しかし、琉斗の舌技に完全に我を失ったらしいヴィルフリートは、激しく腰を使い始めた。  (あご)は痛いし、正直疲れる。しかし、そんなことは気にならないくらい、琉斗もいつの間にか、ヴィルフリートの痴態に興奮しきっていた。  乱暴に抜き差しを繰り返されながらも、唇を窄めたり、ずっしりとした双球を擦り合わせるようにして刺激してやったりと、積極的に愛撫を加える。 「――ッ……!!」  やがてヴィルフリートの身体が強張り、琉斗の口内で爆ぜた。  口いっぱいに吐き出された欲望の証を何とか飲み込もうと、琉斗は必死に嚥下を繰り返す。が、さすがに全部は難しい。  咽る琉斗を見詰めるヴィルフリートは、やや呆然としたまま、快感の余韻に浸る様子だ。とはいえ、悪いことをしたと思わないでもないのか、それでも素直に謝ることもできずに、戸惑っているフシもあった。そしてその先端からは、未だトロトロと白濁を溢れさせている。  本人よりもよほど正直な分身の反応に気付いて、琉斗は思わず声を立てて笑った。 「アンタ、多すぎだろ」 「ッ!」  ヴィルフリートがサッと頰を染めた。何事か言い返そうとしたらしいが、快感に未熟な身体が言う事を聞かないらしく、悔しそうに唇を震わせるのみだ。  ――男の口内をあれだけ激しく犯しておいて、少女のようなこの反応はどうだ。  ヴィルフリートの抱えたギャップが今更のように微笑ましく思えてきて、琉斗はひとしきり肩を揺らした。決して馬鹿にするのではなく、人間としての好感が芽生えた瞬間だったのかもしれない。  それから琉斗は、再度自身のペニスに手を触れた。これで終わるとは思っていないが、やはり中途半端に昂ぶらされているため、一度イッておきたかったからだ。 「ん、……ぁ……ッ」  上下に擦り上げると、既に半分以上勃ち上がっていたペニスが、一気に硬度を増す。溢れた先走りが、一層手の動きを滑らかにした。  ――しかし、琉斗はその先を続けることが出来なかった。 「……ッ!?」  浮遊感に包まれたかと思うと、一気に世界が逆転する。  背後から抱き締められるようにして、ヴィルフリートに押し倒されたことに気付き、琉斗は両目を瞬かせた。

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