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第2話 笪也と幸祐(4)
通勤途中の交差点で幸祐に声をかけられた日から、笪也は社内で幸祐と出逢うと、手を上げたり、声が届くようであれば、一言二言と声をかけるのだった。
幸祐がいつものようにオレンジジュースで休憩をしていると、同期の瀬田が話しかけてきた。
「お前さ、成宮さんとたまに話してるよな」
「あぁ、瀬田、お疲れ。朝、電車降りたら駅でよく会うからさ…」
「ふうん。それくらいで、あんな笑顔で話しかけてくれんだ、成宮さんて」
瀬田は解せない表情だった。
「…うん、変かな」
「まぁ、お前は総務部だから、あんまりわからないかもだけどよ。成宮さんは営業部では一目置かれる人なんだ…まぁ、俺は成宮さんのチームだから普通に話すことはできるんだけど、他のチームの人達からしたら、気安く声をかけられる存在じゃなくてさ…あっ、そのオレンジジュースも成宮さんがここまでのヒット商品にして、当時はそれで社長賞までもらったらしい。俺達がまだ入社する前の話しだけどな」
「えっ?…」
幸祐のジュースを飲む手が止まった。
「どうした?」
「いや…やらかしたな、俺」
幸祐は瀬田に、数日前、自販機のオレンジジュースを笪也の前で絶賛して、是非一度飲んでみてください、と当の本人に薦めたことを伝えた。
「マジか、ウケるんだけど」
瀬田は手を叩きながら大笑いをした。
「お前に言われなくても知ってるって話しだよな」
「成宮さんも人が悪いな…その時に一言くらい、それは俺が手掛けたとか言ってくれたらいいのに」
「いいや、成宮さんらしいよ…お前を気遣ったんだよ、きっと。今はお茶で大変なのに…本当大人だよな」
幸祐は次、朝に会ったら、知らなかったとはいえ、いや知っていなくてはいけないことを知らずにいたことを詫びようと思った。新発売のコーヒーのこともそうだが、愛社精神の欠如とまではいかなくてもある程度の会社における知識や情報は把握しておくべきだと反省するのだった。
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