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第6話 カミングアウト(3)
幸祐の息遣いが更に荒くなった。
「あぁん…笪ちゃん…ねぇ、もう…もう」
「もう…いきそうなの…幸祐」
潤んだ目で笪也を見ながら、うん、と頷いた。
「俺の手の中に出していいよ」
笪也は優しく言った。そして握っていた手で幸祐の亀頭を包み込んだ。
幸祐は一瞬戸惑ったが、高まる絶頂に我慢ができずに、ごめんなさい、と言って笪也の手の中に射精した。
笪也は何も謝らなくてもいいのにと思いながら、最後に絞るように指を動かして、幸祐のモノから手を離した。
反対側の腕を伸ばして枕の横のティッシュの箱を取った。笪也は手の平にある幸祐の精液と萎えた幸祐のモノを拭きながら、終わった幸祐にどんな声をかけようか思い見ていると、幸祐の口から想像もしていない言葉が出た。
「…ごめんね、手に出しちゃった…笪ちゃん、俺ね、誰かとこんなことするの初めてなんだけど…」
幸祐は恥ずかしそうに笪也の顔を見て、また目を伏せて言った。
「なんか俺…今、すごい幸せだなって思っちゃった」
笪也は、幸祐のことが好きな理由はこれなんだと改めて実感した。
幸祐は、楽しいこと嬉しいことがあると純粋に幸せだと感じ、その気持ちを素直に相手に伝えようとする。そしてその気持ちを受けた方も一緒に幸せにしてくれる。
今この瞬間、一緒に暮らし始めた中で幸祐のことが一番愛おしく思えた。そして強く抱きしめた。
「…幸祐、俺も幸せだよ」
しばらく、抱きしめた後、幸祐のパジャマを着直してやった。幸祐の身体を引き寄せ、頭の下に腕を入れて腕枕をした。そして、見つめ合いながらたわいもない話しをした。冗談で、幸祐がしたかったら毎晩でも抜いてやるよ、と言って幸祐の頭やおでこに唇を寄せると、幸祐は恥ずかしそうに笪也の胸に顔を埋めた。
幸祐は戸惑いながらねだったキスの後、こうなることも想像しなくもなかったが、笪也の自分への熱くて優しい想いに触れることができ、身も心ももっと笪也に甘えてみたくなった。それは笪也への『好き』が生まれた瞬間だった。
笪也は幸祐が眠りについたのを確認すると、起こさないようにそっと腕を外して自分の布団に戻った。そして、笪也は幸祐に背を向けると、さっき幸祐を抜いた方の手で静かに自分のも始めた。
翌朝、気持ちよさそうに寝ている幸祐の傍で、笪也はそっと声をかけた。
「幸祐…少し早いけど、俺行くから」
幸祐はその声で、ハッとして目を開けると、いつものスーツ姿の笪也がそこにいた。
「えっ⁈…ごめん…寝過ごした」
幸祐はすぐに身体を起こした。
「そうじゃないよ、幸祐。今朝はいつもより早く行かないといけなかったんだけど、その…昨夜、いい忘れてさ」
幸祐は直ぐに昨夜のことを思い出したようで、顔を赤らめた。
「午前中に社長にご臨席を賜わって会議をするんだけど、その会議のための会議をするんだよ」
笪也はうんざりしながらわざと丁寧な言い回しで伝えると、幸祐は、お疲れ様、と気の毒がった。
「朝、何か食べた?」
「あぁ。幸祐が焼いたパンとコーヒーと冷蔵庫にあるものを少しね」
「少し、時間あるなら、すぐに卵も焼くよ」
「いいよ、大丈夫。ありがとう」
笪也は幸祐の寝癖がついた前髪を掻き上げて、おでこにキスをした。
「じゃあ、いってきます」
「はい。いってらっしゃい。頑張ってね、会議」
そう言ってニッコリとした幸祐の唇にまたキスをした。笪也はこんなにも唇を離したくないキスは初めてだと思った。
「キリがないな…」
笪也は苦笑して、幸祐の頭をクシャッとすると、布団の上から立ち上がって、出かけて行った。
幸祐は枕に顔を埋めた。自分の唇を指で触れて、ふふっ、と嬉しそうにすると、また昨夜のことを思い出して両手で顔を塞いだ。そしてその手で頬をぐにゃぐにゃっとすると、起き上がって顔を洗いにいった。
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