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第8話 二人の日常 続き(5)

 いつものキス、優しい愛撫、心を満たしてくれる囁き、そして迎えた絶頂、幸祐は幸せだった。  次は笪也の番とばかりに、幸祐は笪也の腹の辺りに跨がるように乗った。そして、笪也の唇にキスをした。 「上手くできなかったら、ごめんね」  幸祐は少し照れたような顔をして、笪也の腋の下辺りに手を着いて腰を浮かせた。笪也の体の上で四つん這いになった。さっきまで大人しくしていた笪也のモノは幸祐のその一箇所を狙って勃ち上がっていた。  笪也は幸祐の尻に手を伸ばして、ローションを塗り込めた。幸祐のソコはもう今では解きほぐしもほとんどいらないくらいの体になっている。  幸祐は自分の股ぐらを覗き込むようにして笪也のモノを見ると、その先からは待ちきれないかのように欲情が垂れ始めていた。 「ねぇ笪ちゃん、ローションなんていらないくらいになってるよ」 「そうか?ムスコは正直だな」    笪也は片手で自分の竿を支え、もう片方の手を幸祐の腰に添えると、滑りきった先端へゆっくりと誘導した。  幸祐は思った。押し広げられて笪也の亀頭が入り込む、いつものあの瞬間、止めていた息を少し吐き出し、それからは笪也の動きに合わせて、息は次第に喘ぎ声に変わっていく。今も同じ行為なのに、いつもと違う感覚だと。    今、ゆっくりと本当にゆっくりと笪也が入ってくる。幸祐は初めて笪也を受け入れた時のことを思い出していた。あの時と違うのは自分から笪也を迎えにいっている感覚があった。笪也の腰の辺りを膝立ちで跨ぎ、少しずつ体を沈めていくと笪也が自分の中に入ってくる。幸祐の尻が笪也の鼠径部に付くと、幸祐は少し仰け反るようにして笪也の太ももに手をつく体勢になった。幸祐はどこまでも深く固く繋がりたかった。  笪也は両手で幸祐の腰を持つと、上下に動かすように仕向けた。幸祐は笪也の誘導の通りにゆっくりと腰を動かし始めた。 「ねぇ…笪ちゃん…俺、ちゃんと出来てる?」 「…幸祐…いいよ、凄くいい」  幸祐のその動きにぎこちなさはあるが、いつもと違う締め付け感や、擦られている箇所の微妙な違いと、戸惑いながらも懸命に誘導に合わせて腰を動かす幸祐の可愛らしい顔を見ていると、笪也は次第に興奮し、誘導していた手は幸祐の太ももをただ強く掴むだけになってしまった。  ガイドを失っていった幸祐の腰の動きは、はちゃめちゃになり何度も抜けそうになっては笪也に、あぁっ、と言わせていた。  笪也は何度目かの抜ける寸前の時に幸祐の動きを止めさせた。 「…幸祐、ありがとう…頑張ってくれて」  笪也は上体を起こすと同時に幸祐を後に寝かせた。幸祐の脚を持ち上げて、いつもの二人の体位になった。 「笪ちゃん…ごめん…イケなかったね」 「ううん…興奮した…けど後もう少しだけ」  笪也はそう言って、慣れた動きで幸祐を突き上げると、すぐに、うっ、と声を出して果てた。幸祐の中から萎えはじめたモノを引き抜くと、上に覆い被さった。 「こうしたら、重いんだろ?」  ニヤついて笪也は言うと、幸祐は言い返した。 「重くなったけど、嫌だなんて言ってないよ、俺は」 「わかってるよ」  笪也は幸祐の前髪をかき上げて、おでこにキスをした。 「ねぇ、笪ちゃん…どうだった?俺の初乗りは」 「そうだな…お前のいつもと違う顔が見られたし、いつもより奥まで挿れられたし興奮したけど…お前はどうだった?なぁ…幸祐」  笪也は最後は含み笑いをしながら言った。 「もうっ、笑わないで。途中で笪ちゃんがリードしてくれないから、もうわけわからなくなったんだよ」    笪也は睨む幸祐の顎を掴むと、口の中に舌を捻じ込み、絡めては強く吸い込んでいつもより深く強いキスをした。  いつもの正常位で終わった後は、笪也は、とろんとした表情の幸祐の頬やおでこを撫で、唇を寄せて、どうだった、とか、気持ちよかったか、とかを訊いていた。それに幸祐は、よかったよ、と言う時もあれば、一番よく言うのは、俺幸せだよ、という言葉だった。笪也は毎回意識して訊いていたわけではなく、幸祐の蕩けた可愛い顔を見ると自然に出てしまう言葉だった。幸祐も笪也のその後戯までを欲しがった。  キスをして、笪也の匂いを感じながら満ち足りた気分になるまでが幸祐の幸せなセックスだった。  今日はいつもより熱く激しいキスだった。幸祐はいつもと違うキスの理由はわかっていた。 「…笪ちゃんは、本当は満足してないでしょ…俺の初乗り」  笪也は微苦笑した。 「お前、初乗りばっかり言うけど、乗り物じゃないんだから…まぁ、運転技術はまだまだだし、蛇行しては脱輪しそうになったけど、でも、嬉しかったよ…お前の懸命な運転がさ」 「だって、教官が途中で指導放棄するんだから、動かし方がわからないよ」 「そんなの、お前が気持ちいいと思ったように動かせばいいんだよ」 「もう…それができないんだよ」  そう言うと幸祐は、目の前の笪也の目尻と口角を指で挟むように掴んで、変顔を作ろうとした。 「こーら、何やってんだよ」  笪也は変顔にされたまま、幸祐の鼻にキスをした。 「明日、もう一回乗ってみる?」 「じゃあ、明日も一緒に手を繋いで歩いてくれる?」 「もちろん。疏水の沿道でさ、誰もいなかったらキスしようか」 「もう…高校生じゃないんだから」 「したくないの?お前はドキドキするの好きなんだろ?」 「…好きだけど」 「じゃあ、決まりだ。明日も手を繋いで歩いて、キスして、俺に乗って、脱輪しないように俺をイカせてくれ」  幸祐は恥ずかしそうに頷いた後、笪也の首に手を回して笪也の耳元に口を近づけた。 「ねぇ…外でキスするのとか色々想像してたら…あぁ、笪ちゃん、どうしよう…俺」  笪也は幸祐の股間に手をやった。 「もう、お前は…何でそんなに可愛いんだ」  笪也は幸祐の下腹の方へと唇を這わしていった。

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