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第16話 くちづけ(2)

 早朝、まだ静かな時間。  幸祐はいつものように目が覚めた。でも今朝は横には笪也がいる。幸祐は笪也の方を向いた。笪也はまだ静かな寝息をたてている。  幸祐は笪也の男らしく端正な横顔を見た。笪也の顔が整ってみえるのは、綺麗な鼻梁のせいだと、あらためて思った。そして少し薄い唇。  この唇で昨夜はどのくらいの時間キスをしてくれただろう。会えなかった二年弱の時間を埋めるかのように、甘く、優しく、強く、激しく、息をするのももどかしいくらいの口づけだった。体がどうあれ、お前は俺の宝物だ、と心が蕩けてしまいそうな言葉も言ってくれた。久しぶりの多幸感だった。    幸祐は笪也の唇に指を伸ばした。笪也はまだ起きない。少し迷ったが、幸祐は片肘を着いて上体を起こすと、笪也の唇にそっとキスをした。笪也が起きないかドキドキした。  これからは毎日キスをして抱きしめてもらえると思うだけで、幸祐は胸の奥が熱くなった。そして胸の高鳴りを感じていた。    その時だった。  股間にしばらくなかったあの感覚があった。幸祐は、まさか、と思った。パジャマの上から股間を押さえた。手のひらに固い感触。それは紛れもない久しぶりの感触だった。嬉しさと一緒に血潮が体内を巡っている。  ああ、戻ってきた、と幸祐は素直に喜び、心が緩むのも感じた。笪也がいてくれるだけで、全身に幸せが満ちていく。  幸祐は、寝ている笪也を起こして、このことを伝えるか、それとも後からにするか、どうしようかと悩んだ。  昨夜は泣きながら、勃たないことを打ち明けたばかりなのに、一晩一緒に寝てもらっただけでもう治っているなんて、笪也はどう思うだろうか。  それでも幸祐は、今、笪也に触れて欲しいという気持ちも正直あった。以前のように笪也の大きな手のひらで包み込んで欲しかった。  幸祐は、笪也の手をそっと握って、心の中で、笪ちゃん起きて、と願いながら横顔をじっと見続けた。  すると笪也は、繋がれた手に気付いたのか、うぅん、と声を出すと、ゆっくりと目を開けた。恥ずかしそうに自分を見つめる幸祐を、まだ眠気を残した目で見た。 「…幸祐…もう、起きてたのか?」  笪也は、繋いでいない方の手で、幸祐の頭を撫でて額にキスをした。そして、繋いでいる手をぎゅっと握った。 「なぁ、朝から手を繋いでくれて…可愛いな、お前」  幸祐は、優しい笪也の声を聞くと、自分がさっきまでしてほしかったことが、急に恥ずかしく思えた。  笪也に股間の膨らみがバレないように、体をくの字に曲げて、笪也から股間を遠ざけようとした。が、その不自然な体勢に、笪也は、なんで、離れるの、と幸祐の腰に手をやって引き寄せた。すると引き寄せられた股間は繋いでいる笪也の手に触れた。幸祐は思わず、あっ、と声を上げた。 「えっ…幸祐、お前…」 「笪ちゃん…あの…」  横向きになった笪也の胸に顔を埋めた幸祐は、耳まで真っ赤になっていた。 「幸祐…お前…えぇっ?もしかして…」    笪也は繋いでいた手を解くと、手のひらを幸祐の股間にそっと充てがった。幸祐は笪也の顔を見ることができずに笪也の胸に顔を伏せたままだった。   「あのさ…今朝、目を覚ましたら笪ちゃんが横にいてさ、すごく嬉しくって…でね笪ちゃんにキスしたんだよ…これからずっと笪ちゃんとキスができるし、抱きしめてもらえるんだって思ったら…そしたら…そのなんか、ドキドキして体が熱くなってきて…それで」  幸祐は恥ずかしさを隠すように、一気に喋った。   「それじゃ、俺にキスしたら、治ったってのか?」  幸祐は黙って頷いた。  「あぁ…もう…お前はなんでそんなに可愛いんだよ」  笪也は幸祐に覆い被さると、まだ恥ずかしそうにして目を伏せている幸祐の頬を撫でた。 「そうか…それで、俺の手を持って、触れさせようとしてたんだ」  幸祐は慌てて、首を横に振った。 「違うよ…ちょっと違う」 「違うのか?」 「…急に、その…治ってさ、俺もびっくりしたんだけど…正直言うとね、笪ちゃんに触れて欲しいなと思ったけど…勃たないんだって、昨夜言ったばかりでさ…なんかやっぱり恥ずかしくなって…」 「なんで、恥ずかしいんだよ」  笪也は、まだ頬が赤い幸祐にたまらずキスをしようと思ったが、それより幸祐の可愛い声を聞きたくて、パジャマのボタンを外し胸をはだけさせた。やけに可愛らしくツンとしている乳首を見て、笪也は思わず吸い付いた。そして乳輪を舐めまわしては、何度も舌で転がし、吸い付いつき、幸祐の乳首を堪能した。 「あぁ…あん…笪ちゃん…あぁ」 「幸祐…可愛い…今からもっと気持ちよくしてやるからな」  笪也がパジャマズボンと下着を脱がすと、しっかり硬く熱くなった幸祐のモノが現れた。そして触れた。    笪也の大きな手のひらが、愛しむように優しく握ってくれている、そう感じるだけで、幸祐は心が震えた。 「笪ちゃん…ありがとう」 「お前…ありがとうは、ちょっと違うだろ」  笪也は微苦笑した。   「ううん…違わないよ、ありがとう…大好き…愛してる」  幸祐の目には涙が溢れて、こめかみを伝った。   「うん…ほら、もっと言って…俺がほしいって」 「笪ちゃん…俺、ずっと…ずっと笪ちゃんがほしかった…」  笪也は、最上級の慈しみと愛しさを込めて幸祐を見つめた。 「幸祐…愛してるよ」 「笪ちゃん…俺、幸せだよ」  笪也は体をずらして幸祐の薄い下生えに鼻を寄せた。そして息を吸い込んだ。幸祐の匂いだった。  幸祐の竿を支え持つようにすると、舌を這わせて亀頭をペロリと舐めた。 「ああん…笪ちゃん」 「幸祐…感じるか?」 「うん…うん、笪ちゃん…気持ちいい」  幸祐はパジャマの袖口で涙を拭うと、その顔はもう泣き顔ではなく、眉根を寄せながら笪也の幸せな攻めに感じている顔になっていた。  笪也は上顎に亀頭を擦り付けると幸祐は腰を捩った。フェラをしてやるとこんなにモゾモゾしていたか、と、笪也は思いながら続けた。  幸祐の体は、久しく感じていなかったその快感に反応し自然と動いていた。  笪也は舌先で幸祐の一番感じる場所を掘るようにして擦ると、あっという間に幸祐は射精した。 「あっ…あっ…ああああああ――――っ」  まだ明けきらない静かな街にそぐわないくらい、幸祐の声は大きかった。    その声の大きさに驚いたのは、当の本人だった。慌てて両手で口を塞いだ。 「お前…そんなによかったか」  笪也はその声の大きさに驚きながらも、ニヤついた顔で幸祐を見た。 「もう…そんな顔で見ないでよ…恥ずかしいから」 「お前の辛かった気持ち、全部出せたか?」  それを聞いて幸祐の目にまた涙が溢れ、笪也は、優しくその涙を唇で受け止めた。  幸祐は少し青臭い笪也の唇に吸い付くようにくちづけをした。今のこの気持ちを笪也になんて伝えたらいいのか、幸せ、という言葉だけでは言い表せないもどかしさを感じていた。  はっきりとわかるのは、幸祐も笪也に触れたかった。笪也を感じたかった。   「ねぇ…次は笪ちゃんを感じさせて」 「俺は、今じゃなくてもいいよ」 「だめ…今がいい」  笪也は仕方がないなぁと言わんばかりの顔をして腰を上げた。ほらよ、と言ってスウェットパンツと下着を一緒に下ろした。  幸祐は笪也の黒々とした下生えと、その下にあるまだ目覚めていないモノを、はにかんだ顔で見た。 「どうしたんだよ。そんな顔して」 「ねぇ。笪ちゃんって、こんな大きかったっけ」 「お前、誰と比べてるんだ」  笪也は声を低くして言った。 「以前の笪也ちゃんだよ」 「それは、俺を過小評価しすぎだ」  幸祐は細い指で、笪也のモノを掬い上げて握ると、見る見るうちに幸祐の中指ですら周りきらないくらいに太く硬くなっていった。 「早いよ笪ちゃん…もう、こんなになって」 「お前が、待ちきれないみたいだ」  幸祐は笪也の立派なモノの触り心地を感じようと、ゆっくりと指先を動かした。そして笪也の臍の辺りを頬ずりした。  笪也は幸祐の髪を優しく撫でた。 「なぁ、久し振りだからって、顎外すんじゃないぞ」  幸祐は、笪也の方に顔を向けると、悪戯っぽく、べぇっ、と舌を出すと、そのまま笪也の亀頭を舐めた。そして、笪ちゃんのだ、と小さな声で言うと、口の中に挿れた。笪也を味わうかのように強く吸って、舐め続けた。

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