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第9話
それから、ふたりの暮らしが始まった。
今ではハジメもすっかり観光ガイドの仕事に馴染み、セドリックも広場でジェラート売りのアルバイトをしている。
「ん……」
先に目を覚ましたセドリックは、裸足で床に降りると、カーテンを開け、ハジメを起こした。
「起きて、ハジメ。今日はお仕事でしょ?」
「ん……おはよう俺のかわいこちゃん」
ハジメは寝起きのまだ高い体温の腕を伸ばすと、セドリックを抱き寄せてキス。
そのままベッドに引きずり込まれそうになって、慌ててセドリックはハジメの腕を逃れようともがいた。
「ダメだよ、起きて。オプショナルツアーのガイドに遅れちゃう」
「大丈夫、俺、準備早いから」
「そう言う問題じゃないでしょう? 僕は消えないし、逃げないから、ほら、朝ご飯。パンとシリアルどっちが良いの?」
「んー……シリアル」
「卵は?」
「スクランブル」
「コーヒー? 紅茶?」
「コーヒー。でもそれより、セディが良い」
「ぁ……んっ、んっ……」
言って、ハジメは腕の中のセディの身体をまさぐりながら、唇を奪う。
「ん……はぁ……だめ、ハジメ。まだ朝」
制止するセドリックの声も聞かずにハジメはセドリックのTシャツをたくし上げ、舌を伸ばして、乳首を舐め上げた。
「だめなのにぃ……」
ちろちろと舌先で嬲られ、セドリックは思わずハジメの頭を抱え込む。
「ぁ……んっ。ハジメッ……」
「セディ。今朝も可愛いね」
首筋にキスしながら、ハジメの手はセドリックの後ろに回る。
「ぁっ……ハジメッ……」
セドリックは、昨夜さんざ可愛がられた蕾みにつぽりと、中指を押し込められた。
ぬるぬると中を掻きませながら、嬉しそうにハジメが呟く。
「中、まだとろとろ」
「誰がしたの……」
「俺」
くぷっと二本目の指が押し入ってきて、セディの内壁をなぞり上げて刺激する。
「ぁっ……ダメッ……しない、もうしないよ……っ?」
「どうして? こんなに美味しそうにアナルがヒクヒクしてるのに?」
「それは、ハジメがぁ……」
涙目になったセドリックへ、ハジメはその瞼にキスをする。
慰められてほっとしたのも束の間、セドリックはぐるんと身体をひっくり返された。
「え?」
「ごめんね。セディは可愛すぎていけない。他の男にそんな顔しちゃダメだからね?」
「ぁっ……ぁあぁッ!」
後ろからアナルへ押し当てられたハジメの朝の昂ぶりが、そのまま、ぬぷりとセドリックを貫いた。
「ん……っんっ……っあっ……ぁんっ!」
ほぼ日課になりつつある朝のセックスに、いつまでも慣れないセドリックはベッドのヘッドボードに掴まってバックで突かれ――結局ふたりはシリアルだけをミルクでかき込んで、それぞれの職場へと向かったのだった。
◉
――もう、ハジメにつきあっていたら、身が持たないよ。
広場に着いたセドリックは、パラソルの下のアイスブースでエプロンを身につけた。
いつも通り三角形にジェラートを盛っては、アイスを買いに来た観光客や、街の人たちにコーンを手渡す。
――昨日の夜だって、なんだかそんな感じになっちゃって……今週してない日なんてあったかなあ。
最初のうち、セドリックは上手に三角形に盛り付けられず、ぺたぺたとジェラートを幾度も重ねてしまったのだが、結果、あそこの店は盛りが良いと購入客を喜ばせ、忙しい毎日となったのだった。
――それにしても、暑い……。
ふっとセドリックの意識が遠のいたのは一瞬。
けれど次に目を覚ました時、セドリックはエアコンの効いた涼しい事務室のような場所のソファの上で目を覚ました。
「セディ!」
覗き込んできたのは、ハジメだった。
「え? あれ? 僕お店……」
「そっちは大丈夫だ、人に任せてきた」
「ここ、どこ……」
「なじみの先生がいる診療所だ。セディが倒れたって、広場の人が教えてくれて運んできた。大丈夫か? セディ、痛いところは??」
慌てふためくハジメの後ろのドアが開き、ドクターが顔を出した。
「だから過労だと言ったろう」
ハジメはドクターを振り返る。
「だけど……」
「今夜は寝かせてやるんだぞ? 今夜だけじゃない、まあ、当分な」
「どういう意味だ?」
「キスマーク」
「え?」
「そこいらじゅう、真新しいものから古いものまで。ちっとは寝かせてやれ、ハジメ」
「先生?!」
「じゃあの、午後の診療が始まる、早く帰った帰った」
真っ赤になったセドリックと動顛したハジメを置いてドクターは診察室へと戻って行った。
「ハ……ハジメ」
「ごめん……俺が……」
「お会計はいいそうです、どうぞお帰り下さい」
苦笑しながらナースはそう言って、ふたりを病院から送り出したのだった。
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