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【番外編】そこだけがおんなのこ 後編

 今日は古良井の仕事の日だった。  大ぶりのスポーツバッグを肩にかけて、日比谷のビジネス街を抜ける。  出張に来た地方のサラリーマンが、今回の清掃対象だった。  メモに書かれたナンバー通りのホテルの一室にたどり着く。2度ほどノックをすると、中から震える店の女の子が顔を出した。  古良井とは顔見知りのデリヘル嬢だ。 「大丈夫だから。下に送迎車が来てるから乗って?」 「古良井さん……」 「うん、これは俺の仕事。君は君の仕事をしたんだから一所さんは怒らないよ。じゃあね」  古良井は言って、手袋をしながら嬢を送り出すと、ドアを閉めて鍵をかけた。  紙巻きタバコの臭いが残る部屋。  セミダブルのベッド。そのそば床に、ぶちまけられた灰皿の中身ごと、男の遺体が転がっている。  嫌がるプレイを敷いて、挙句にメニュー外のSMプレイと中出しを強要し、首を絞められて嫌がる彼女が、伸ばした指先に触れた大理石の灰皿で、男の頭を殴ったのだ。  逆上した男がなお首を締めたので、嬢は必死に男の顔をめった打ちし、灰皿が顔面の急所に当たって男は死亡。  古良井は漁師みたいな仕事着に着替えると、早速作業に取り掛かった。  まず、古良井は遺体を担ぎ起こすと、バスタブの中へと放り込む。  次にバッグから取り出した刃物で、豚を解体するみたいに男を解体。  一度水で浴槽内を流してから浴槽の排水口を塞ぐと、何で出来てるか知らない液体の詰まった大きなボトルを取り出して、ドボドボと男の体にかけた。  男の体が全部溶け切るまで1時間。  それから、古良井は部屋に戻ると、男の私物を全て回収して、血まみれのシーツを、どこから入手したか知らない、このホテルのものと張り替える。  剥がしたものは綺麗に畳んで小さくし、これもバッグにしまった。  バスルームに戻れば、ドロドロの液体が出来上がっている。  古良井は栓を引き抜いて、排水が終わるのを待ち、綺麗にバスタブや浴室を流した。 「おしまい」  古良井は再び着替えると、チェックアウトボックスにルームキーを放り込んでホテルを出る。  外に出てから手袋を外してスマホを取り出した。 「はじめさん。迎えに来て」 「さくたろ、おつかれさま。今ちょっと立て込んでて……地下鉄で帰ってこれないかな」 「可愛い愛人がふらふらこんな遅くに出歩いて、帰り道に襲われてレイプされてもいいならいいですよ」 「いま行くから待って」  古良井の体に異変が起きてから1週間。  古良井の体は、まだ元に戻らない。 そこだけがおんなのこ 後編  一台の車がパッシングしながらホテルの前に停車する。  古良井が近づくとドアが開いて、一所が降り立った。 「荷物持つよ」  古良井からスポーツバッグを受け取って、トランクに放り込む。 「乗って」  古良井は助手席に乗ると、ちょんちょんと自分の頬を突いた。 「お疲れ様のちゅうは?」 「ん、おつかれさま」  笑って、一所はウィンカーを出しながら、古良井の頬に唇を押し当てた。 「お髭くすぐったい」  古良井もくすくすと笑いながらシートベルトを締める。 「はじめさん。えっちしたいです」 「ええ?」  するりと手が伸びて、古良井の手が一所の股間を撫でた。 「どうしたの」 「なんか、興奮しちゃって……この身体になって初めてのお仕事だったから……」 「うーん、ゴム持ってきてないよ?」 「生でいいです」  古良井は一所のジッパーを下ろすとゴソゴソと取り出し始める。 「待って、さくたろう、今運転中! 僕ハンドル握ってるから……」 「さっさとどこかに停めればいいじゃないですか」 「何処かって……ああ、もう!!」  一所は観念すると、車を大通りから外して、最寄りの有料駐車場へと潜り込ませる。 「さくちゃん、カーセックスって、すごい車揺れて、外から一目瞭然なんだよ?」 「こんな時間に出歩く人はあんまりいません」 「でも……」 「ごちゃごちゃうるさいです。はじめさんのばか」  言って、古良井は両腕を一緒の首に絡めて引き寄せた。 「ん…んん……❤︎」  キスが始まってしまうともう、止まらない。  一所はシートベルトを外して自分のシートを少し倒した。 「おいで、さく」  一所は自分の上に古良井を乗せる。 「ズボン、下ろせる?」 「はじめさんが、脱がせてください」 「どれ、腰を浮かせて」  ジャージを履いていた古良井のズボンを、下着ごとするりと下ろして、一所は古良井の秘部に指を滑らせた。  ぬるっ❤︎ 「ぁっ……❤︎」  一所の指の感触に、古良井は思わず声を上げる。 「ふふっ。ぬるぬるだね」  つぷり……❤︎  中指がぬかるみに入り込み、ぬるぬると古良井の中をかき混ぜた。 「あっ❤︎ あっ……❤︎」  古良井は一所にしがみついたまま、もっと触って欲しくて腰を浮かせる。   「あー、だめだ。美味しそう。挿れるよ」  一所は、古良井が引き出して放置した自分の陰茎を掴んで扱くと、それはすぐに力を増して、古良井の陰唇を分入ってしまった。 「ぁっ❤︎ はぁあぁっ❤︎」  ぬぷんっ❤︎  根元まで咥え込んだ古良井が腰を落とす。  下から一所にゆるゆると突き上げられ、たまらない、気持ちがいい。  にゅるにゅると古良井の中が蠢いて、一所はイキそうになるのを抑えるのに手一杯だ。 「さくたろっ、ナカ、出ちゃうから、もうちょっと大人しく……」 「そんな、何をどうすればいいんですかぁ……はじめさんこそ、そんな、腰振らなければいいのにぃ……あっ❤︎ あっ❤︎」 「これは、不可抗力です、んっ……」  古良井の中に直に触れ、いま、この突き立てている肉棒で、犯し倒して射精したい凶暴な本能がムクムクと湧き上がる。  ぐちゅんっ❤︎❤︎❤︎ 「っかはっ……❤︎❤︎❤︎❤︎❤︎」  深く突かれて、古良井の喉から息が漏れた。 「はじめさ……やだぁ……❤︎ そんなにしたら❤︎ ぁ……❤︎ おかしくなっちゃ……❤︎」 「さくたろうの中、気持ち良すぎて、僕はとっくにおかしくなってるけどね」 「んっ❤︎ んっ❤︎」  しばらく無言で腰を振ったあと、堪えきれなくなって、一所は言った。 「ごめんね、さくたろ、中に出すよ」 「ええ?! あんなにダメっていってたの……❤︎ にっ……❤︎」 「ごめん、さくたろ、孕ませたい」 「そんなっ、俺……❤︎赤ちゃんなんて……❤︎❤︎」 「うん、出来たら、育てようね、さくたろ……だから、いい? 出すよ? 出すよ?」 「そんなっ……❤︎」  止めることなど出来るわけもなく、一所の吐き出す精子を古良井は中に受け止めてしまう。 「んっ…………っ〜〜〜〜❤︎❤︎❤︎❤︎」 「あっ、出てる、はじめさん、ナカ……熱いのっ❤︎❤︎❤︎❤︎ びゅーびゅー出てるぅ❤︎❤︎❤︎」  びくびくと体を震わせてイく古良井に、一所は、ぐっと、腰を押し付けて、最後の一滴まで、中へと白濁した精液を注ぎ込んだ。 「はっ……はぁ……はっ……」  獣じみた荒い息を吐いて、一所は倒れ込んできた古良井を抱き止める。 「しちゃったね」  古良井の頭を撫でながら、一所がつぶやく。 「しちゃったじゃないですかぁ、中出し。どうするんですか、もう……」 「うん……さくたろ」 「何ですか」  一所は古良井の耳元に囁いた。 「僕との赤ちゃん、嫌?」 「……そんなわけないじゃないですかぁ」 「じゃあ、赤ちゃん出来るまで、ずっとこれしようね」 「ん……」           ◉  その翌日、古良井の体が元に戻ったのは──お約束のお話。

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