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9 あなたとだけど

「朔、何食べたい?」  会場への道すがら、立ち並ぶ屋台の前を歩きながら、一所がたずねる。 「りんご飴がいいです」 「他には?」  重ねてたずねた一所に、古良井が首を傾げた。 「そのバスケット、何が入ってるんですか?」 「ああ、これ?」  一所は軽く持ち上げて見せる。 「ワインとカマンベールチーズ。それからクラッカーとイチジクのコンポート。君用に、アイスティーのポットも入ってるよ」 「美味しそうですね」 「ブランチを取ったきり、昼を食べてないだろう? これじゃあ足りないと思うから、食べたい物を屋台で何か買いたそう」 「じゃあ、じゃがバターが良いです」 「わかった」  りんご飴とじゃがバター――小芋が幾つも入った上にバターがのせられた変わり種だ――を調達して、ふたりは観覧席の区画に入った。  一所はバスケットから赤いチェック柄のシートを取り出して広げる。  花火が始まるまで、あと一時間と言ったところだ。  下駄を脱いでシートに上がると、二人は渡された花火のプログラムをのぞきながら、早目の夕食をゆっくりと取り始める。 「美味しいですね」  デザートのコンポートは、一所が煮込んだものだった。ブランデーが入っている。  下戸の古良井は、ワインを少しだけ味見させて貰うと、あとはアイスティーを飲んでいたのだが、コンポートを食べ過ぎて、少し、酔ってしまったようだ。 「大丈夫かい?」 「ふふ、頬がちょっと熱いです」 「朔、もっとアイスティー飲んで」 「ふあい」 「ブランデー、多すぎたかな」  自分が好きなもので、一所はつい入れすぎたようだ。  けれども、両手で紙コップを抱え飲みしながら、古良井は上機嫌。  辺りは夏の夕暮れだ。 薄紫とオレンジが層になって、川向こうに陽が沈んでいき、やがて夜の帳が下りる。  二人はシートに並んで横になって、星空を見上げた。  花火大会開催のアナウンスが流れ、会場に拍手が広がる。 「楽しいですね」  ふふふと笑う古良井はまだ酔っている。  ふと。  暗闇の中で、一所の素足に、古良井の足先が触れた。  熱い。  アルコールに身体はまだ火照っているようだ。  一所が、古良井の足の甲をつま先でなぞると、古良井が、ん、と色っぽい声を上げた。  そこで、一所は後ろから古良井を抱きすくめる。  やはり浴衣越しの体温が、やや高い。 「悪かったね、コンポート。気分は悪くないか?」  耳元に囁くと。古良井がびくりと身体を竦めた。 「み、耳元でしゃべっちゃだめです、はじめさん……」 「? どうして?」  その時、花火の昇る音。続けて夜空に光が弾けた。  そこかしこで歓声が上がる。  観客は、始まった夜空のショーに釘付けだ。 「か……感じちゃうので」  古良井が困った風に答えたので、一所はつい、その耳たぶを唇で食んだ。 「ひぁっ…♥ ぃや……♥」  古良井の上げた艶っぽい声は、花火の音でかき消される。  逃げる身体を、一所は後ろから抱きすくめ、足を絡めた。 「だめです♥ 花火……見るんですよね?」 「うん、見てるよ。綺麗だね? また上がった。ほら、しだれ柳だ」  言いながら一所は、浴衣の上から古良井の身体をまさぐり、乳首を指で撫で上げる。 「んっ……♥ んっ♥」 「ああ、次は牡丹か。鮮やかな色だなあ」  一所は古良井のうなじにキスを落としては、耳たぶに唇が触れるように囁きかける。  浴衣の上から両乳首を指できゅっと摘ままれ、古良井の身体がまたびくりと揺れた。 「ぁん♥」  ドンドンと、大きな花火の上がる音はひっ きりなしで、人々の歓声が会場を包む。  古良井の火照った身体は敏感になり、軽い酩酊感で頭があまり回らない。 「ハジメさぁん♥ キスして……♥」  古良井はとろんとした目で一所を振り返り、首に腕を回した。 「朔……」  ――やりすぎたか。  反省しながら一所は、古良井の希望通りに唇を重ねる。 「ん…♥ ンッ♥ んん……♥ はぁ……♥」    ひとしきり唇を貪ってから、一所は古良井の耳元に囁いた。 「続きはやっぱり帰ってから、な」

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