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第5話 楽器

「みんな、それぞれ今日やろうと思ってた事をやってくれ。」  テツはベースを繋いでアンプの調子を見ながら音出ししている。  タカヨシは自慢のレスポールを調整している。 「立花さんもギブソンですね。 J45だ。エレアコ?渋いなぁ。」 テツを見て立花さんが 「やっぱり、エレキベースはフェンダーか。 テツもこだわりがあるの?」 「これはジャガーです。見た目がカッコいい。 前はムスタングだった。押さえやすかったから。 でも、初心者向けかな、と思って。」 「プロ意識スゲェ。」 「プロでもないのに。」 「音楽の方向性は、みんな違うみたいだ。 年令も違うし。でも、なんかやって見る?」 立花さんが言った。  楽器を弄っていたら思いのほか、時間が過ぎた。凍夜のスマホがブーブー言っている。 「うん、わかった、迎えに行くよ。」  凍夜はディアボラにミコトを迎えに行くので、今夜は解散となった。 「明日、休みだから俺の家にテツ泊まるんで。 俺たち一緒に帰ります。」 タカヨシが言った。 「車?」 「ええ、社割のアウディです。」 キースの父のショールームはアウディの代理店でもある。ランボルギーニはアウディが吸収合併した会社だ。  タカヨシとテツが出て行った。 「少し詰めた話もしたいな。」  立花さんが言って、凍夜たちはここに戻ってくる事になった。 「なんか軽食、見繕ってきます。」  キースも出て行った。階下のフロア全部が家族用の住居だ。今は父が、何人かのスタッフといるだけだが。  何か出前でも、と考えていた。ウーバーに電話してスタジオに戻った。  厚い扉を開けると、真剣な顔をしてギターを弾いている立花さんがいた。 「あ、お邪魔?」 「いや、大丈夫。」 ほんのひと時、キースと立花さんは見つめ合った。視線を外してにっこり微笑む立花さんは何か大人の余裕がある。キースは余裕なんか何処かに吹っ飛んだ。  立花さんはキースの腕を掴んで 「ドラム叩いてくれよ。」 「えっ?」

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