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第6話 ドラム
いつも一人で叩いていたから、ソロは得意だ。
汗だくになって叩きまくった。
煩悩を消し去るように。修行僧のように。
「はぁっ、はぁっ、アッちいなぁ。」
キースはシャツをバタバタさせる。
スマホが震えている。
「あ、玄関ロック解除してあるよ。
出前届いた?待って来れるか?」
「立花さん、凍夜とミコトが帰って来たよ。
何か飲みますか?」
「車だから酒はいらない。コーラかなんかで。」
また、しばらく間が空いてしまった。不本意ながら,見つめ合う。
(こんな時は、立花さんキスしたりしないんだ。)
理性が邪魔をする。お互いに。
「ただいまぁ!出戻りでーす。
ピザ届いたよ。腹減ったぁ。」
大きな包みを抱えてミコトがわざとはしゃいで見せた。空気が固い。
「こんばんは、ミコトです。」
「立花さん、これは俺の嫁。よろしく。」
凍夜の言葉に立花さんは笑って
「君はゲイか?凍夜。」
キースが
「違うよ、凍夜はミコトに出会うまでは凄い女っ誑しだったんだよ。
ゲイじゃなかった。男はミコト限定。」
「なるほど、キースも同じだ。
いつも違う女の子と一緒だったね。
高校生の頃から見て来たからね。
キースは女の子にモテてたよ。
凍夜もきっと凄くモテたんだろう。
どうして男を愛するようになったのか、中々興味深いね。」
ピザを食べて、しばらく音楽の話をして、凍夜とミコトは帰る事にした。
「ブルースになりそうな歌詞を考えてきますよ。
ウチのミコトが。」
「えっ?凍夜、無茶振り。」
「じゃ、帰りまーす。」
また、立花さんと二人になってしまった。
「私も帰ろう。」
「あのぅ、立花さんって一人暮らしだよね。
家で誰か待ってるの?」
「誰かいたら、こんな時間まで帰らないわけないだろ。」
「じゃあ、泊まっていけば?
この隣、僕の部屋だから。お風呂もあるし。」
「キースと同じベッドで寝るのかい?」
「そ,そんなつもりじゃないよ。」
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