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第13話 サンバクラブ
3人で肉を食う。
「もったいないなぁ、いい肉は生で食え。」
「ははは、肉食男子。」
「男はみんな肉食だろ。
ミコトは凍夜に毎日食われてるんだろ。」
「なんか、キースって下品になったなぁ。」
この頃、キースはスタジオの隣の部屋でミクオとほぼ同棲状態だった。
身体を開かれ、快楽を教え込まれ、もうミクオから離れられない。
二人で愛し合えれば、どんな所でも愛の巣なのだ。片付いていない倉庫のようなスタジオの隣のキースの部屋は、ロマンチックな要素は全く無いが、愛し合う二人には、それで満足だ。
狭いシャワーで愛し合う。狭いベッドで愛し合う。床の上でだって愛し合える。どこでも野獣になれる。ミクオになら、全てを差し出す。全てを食べられたい。
「僕、頭がおかしくなったみたい。
ミクオしか欲しくないんだ。」
スタジオのソファはあまり使わないようにしている。みんなが集まった時、思い出してしまうから。
ミクオの熱い愛撫に身体が溶ける。
時々、ギターを弾きながら歌ってくれるミクオの声。このまま、死んでしまいたい、終わりが来る前に。
たまに自分の家に帰るミクオを見送るのがつらい。ミクオの私生活をほとんど知らないのだ。
「サンバクラブに踊りに行くか?」
凍夜とミコトを誘った。この前と同じだ。
分厚いドアを開けると物凄い爆音。
今夜はラテンじゃないのか?
いつもバンドの演奏はあるけど、今夜はヘビィメタルか、ハードロックって奴?
マイクを待って歌ってるのは、あのミクオの妻だと言っていた女(ひと)。
シャウトか、叫びか、若い頃のヨーコ・オノ?
すごい迫力で歌ってる。一曲終わって今度はバラード。ジャニス・ジョプリン?
ーー窓辺に座って雨を見てるのーー
ボール&チェーン。しっとりと歌い上げる。
バンド演奏が終わって、フロアはダンスタイム。
今度はDJが皿を回す。
ラテンがかかってキースと凍夜がフロアに行く。いつものセクシーなダンス。誰にも負けない。今日も周りで見ているカップルが、抱き合ってその気になっている。
ミクオとあの女性も踊り始める。彼女のリードでミクオまでセクシーに見える。
今すぐセックスしそうな、セクシーで、それでいて一線を越えない。焦ったい踊り。
お互いの身体を知っているもの同士だと、わかってしまう親密さ。
キースは凍夜と目を合わせてフロアを出た。
「帰ろう。」
「立花さんに挨拶しなくていいのか?」
「いいよ、あんな奴。
ホストクラブでイケメンと遊ぼう。」
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