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第19話 ブルース 3

 しばらく経ったある日。 「古臭いね。」 タカヨシが言い出した。 「2010年代のインターネットミュージックはもう古臭い。しかも俺は70年代なんて知らないんだ。この頃何故かジャズばかり聞いてる。」  スタジオでミクオがかけるのはほとんどがジャズだ。ちょっと心を奪われる。 「ジャズは古くならない、って言うか 古いのがいいんだ。」  珍しくスタジオにみんなが集まっている。 「こんなの、どう?」 ちょっと凍夜がピアノを弾いた。 透明感? 「なんか昔のモータウンのソウルミュージックみたいな、あの飛行機が飛び立つ時のワクワク感がする。バリー・ホワイトを思わせる。 綺麗な曲だね。」 「珍しいな。」 「ミコトが酷い歌詞を付けたんだよ。」 みんなに楽譜のコピーを手渡しながら、凍夜は歌い始めた。 ーー気持ち悪い男。   いつもそばにいる。   愛とか言ってる。   そんなの違うよ。   束縛するのが愛だって。   僕を縛り付けて   ホントに首輪を付けて   僕を飼うって。   無理矢理くちづけしてくる。   苦い酒を口移しに飲ませる。   止めて!   僕にあんたを殺させないで。ーー    ものすごく綺麗なメロディーに乗せておぞましい歌詞が歌われる。  途中から突然の壮大な転調。叫ぶように歌が変わった。 ーーああ、もう戻れないよ。   僕はアンタを傷付けるのが楽しいから。   ほら、こんなに血が出るんだ。ーー 「ミコト、大丈夫か? トラウマになりそうな歌詞だな。」 「うん、昔、心の中で毎日殺そうと思ってた奴がいたんだ。」 「このままじゃ発表出来ないけど、 ドラマがあるな。まさにプログレ。  もっと長尺で物語にすれば面白いな。」 「編曲がものを言うな。」

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