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第21話 ミコトの不安
凍夜は時間をかけて曲を修正した。ミコトは歌詞をキチンと整理した。
「オレ、心配なことがあるんだ。
あの男が出所してきたらどうしよう。
それに父の最後を看取ったと言っている
あの鈴木康夫はもう出てきてるらしい。」
ミコトは子供の頃、母の再婚相手に性的虐待を受けていた。
その男の部下だったミコトの父は、不審死を遂げている。
男は会社の中で数々のハラスメントで訴えられた。児童ポルノ所持でも捕まった。
しかも業務上横領で刑事訴追され懲役刑で服役したが、いつ出所するかわからない。
鈴木康夫というのはあの男の部下でミコトの父を山に誘ったら、テントの中で死んでしまったと証言したが、ミコトはこいつが父を殺したのではないか?と考えている。
児童ポルノに関わっていた罪で逮捕されたが前科もあり、懲役刑となっていた。
鈴木康夫がミコトの父を殺害したという証拠は見つからなかった。あのミコトの義父だった男も証拠不十分で、殺人教唆には問えなかった。
殺人でも立証されれば懲役も長いだろうが、鈴木は児童ポルノ所持では、軽かった。
「この歌が世に出れば、きっと奴らは気がつくよ。あの男は執念深いんだ。」
凍夜はあの男たちを社会的に抹殺する方法を考えた。ミコトは元気がない。
「オレは目立つ事をやってはいけないんだ。
凍夜はバンド続けてよ。」
ミコトだけが背負う事じゃない。
ミコトはホストを続けている。凍夜が送迎している。何かあってはいけないのだ。
凍夜はボイストレーニングのあとスタジオに顔を出す。毎日のルーティンになった。
スタジオには、なんとなくみんな集まって来る。
今日は、モニターでユーチューブらしき画面が流れている。サックスの曲。アニメの曲か。
画面の中で松ちゃんがアルトサックスを吹いている。
「いいねぇ、松ちゃん上手いな。」
再生回数がすごい。
トラックの荷台がちょっとしたスタジオのようになっていて音がいい感じに響く。
「けっこう大きなトラックなんだな。
トレーラーかな。うまく出来てる。
音響もいい感じだ。」
「松ちゃんこんな配信してたんだね。
再生回数が凄い。セミプロ?」
サックスはかなりの腕前で実際、プロからオファーが来ているらしい。
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