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第22話 スタジオ

 ミクオがみんなに聞いている。 「これから何がやりたいんだ? プロデビューなのか?」  テツとタカヨシが顔を見合わせた。 「俺は70年代のロックを聴いて、ああ、こんなのがやりたいって思ったよ。」  テツがベースを持ち出してアンプに繋いだ。腹に響くベースの低音。  タカヨシも自分のギターを弾き始めた。タカヨシは超絶速弾きを練習中だ。 「上手いなぁ。タカはジェフベックが好きなんだろ。」    ミクオが珍しくピアノの前に座ってゆっくり弾き始めた。 「あ、凍夜の曲。」 ピアノが、短かった曲を重ねて、重厚さ、を増している。途中からドラマチックになる所は感動ものだ。  ミクオが楽譜を、楽器別に作ってくれた。 「みんなのパートを大まかに分けてスコアを作ったから、それぞれ自分用に変えて書き込んでくれ。」 「凄いな、ミクオさん忙しいのに、いつ作ったんだ?キース、大丈夫なのか?」 凍夜がマジで心配している。 「うん、僕もドラミングを叩き込まれたよ。 ミクオは厳しい先生だ。」 「で、これからの方向性は?」  凍夜は困った顔をしている。 「実はあまり有名になりたくないんだ。」 「気が早いな、まだ無名だよ。」  それでどこかに所属してCDデビューとかよりも、ライブハウスとか、小さい規模のフェスとかに飛び入り参加でもするのがいい、ということになった。 「デモCDとかは作った方がいい。 欲しい人もいるよな。」  キースのスタジオで録音出来る最低限の設備を入れてもらった。 「すごいな、こんなのがすぐに出来るなんて。」  キースの憧れは、今はないスイス、モントレーのマウンテンスタジオだ。  クイーンの最後のアルバムを作ったスタジオ。優秀なエンジニアのデビット・リチャーズがいた。今は解体されたがあんなスタジオが夢だった。  「ミクオ、デモ録音で作ってみよう。」 「おいおい、車のエンジニアと音楽では、全然違うんだぞ。」 「ミクオなら不可能はない、 と思ったんだけどなぁ。」 キースの真っ直ぐな瞳に苦笑いのミクオが抱き寄せてキスした。なんだか久しぶりな気がする。 「この頃忙しそうで、寂しかったよ。」 「みんなが帰ったらな。待ってろ。」 ギュッと手を握られて、キースは泣きそうになった。

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