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第25話 打ち上げ 2
みんなそれぞれ盛り上がっている。
ミクオは嬢たちに囲まれてソファにゆったり座っている。タバコを取り出して火をつけてもらう。
美人の嬢が、その手を自分の手で囲んで顔を寄せてライターを差し出す。頬寄せてタバコに火をつけるミクオがたまらなくセクシーで、いかにも女の扱いに慣れたプレイボーイに見える。
「どうした?呆けた顔して。」
凍夜が気付いてキースを気遣う。
この所、忙しくてキースの所にあまり泊まらなかったミクオ。
自宅で楽譜を作っていたのだろう。キースはミクオの自宅に行った事はない。
大人の秘密の匂いがして、キースは遠慮してしまう。踏み込んではいけないプライベートだと思うから。
「凍夜、元気そうね。」
アンジーのマリアが来た。以前凍夜に惚れて騒いでいた。アンジーのナンバーに入る美人だ。
その上、気風がいいのでファンは多い。
「マリア、相変わらずいい女だなぁ。
奮い付いて押し倒したくなるよ。」
「フフフ、ありがとう。最高の褒め言葉よ。
だから、女が勘違いするのね。
刺されないように気をつけて。」
凪の刃傷沙汰を揶揄しているのだ。
キースが呆れて
「ホント、女誑しだったな、凍夜は。」
「俺は本当は女が好きじゃなかったんだよ。
やっと気が付いたんだ。」
隣でテツと話し込んでいるミコトを見た。
ミコトは可愛くなっている。一日中控えめにしていたミコトがいじらしい。
(畜生!早く帰ってミコトを抱きたい。)
凍夜と同じようにキースもまた、焦れた気持ちだった。
(なんだかミクオは、みんなのものみたいで嫌だな。)
「ミクオさんは京子ママの旦那様なんでしょう?」
アンジーの嬢の一人が、事情も知らないで言い出した。
「え?そうなんですか?」
キースとミクオが同棲している事を知っているメンバーが驚いた。スタジオを使ってるバンドメンバーに二人の事を知らない者はいない。
ゆったりとソファに座って嬢に囲まれて、全く動揺していないのはミクオだけのようだ。
キースと目が合う。目をそらさないミクオ。
キースは下を向いてしまう。
「あーあ、アタシが結婚でもしないと周りがザワつくわね。
ミクオとはとうに離婚したのよ。元々偽装結婚だったし、今はいいお友達。
ミクオには誰よりも大切な人がいるのよ。」
ミクオは笑ってキースを抱き寄せた。そしてみんなの前で熱いくちづけをした。
キースは腰が抜けそうだった。涙が出て来た。
(カッコ悪いよ、泣いたらダメだ。)
ミクオが抱きしめて、涙をキスで止める。
(ああ、久しぶりのミクオの匂い。)
「私の伴侶だ。キースはセクシーだっただろ。
誰にもやらないよ。」
汗ばんで金髪が張り付いた額を撫でてまたキス。優しくおでこに口付ける。
みんなが拍手してくれた。
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