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第28話 デモCD
「北海道の友達が教えてくれた。
前にリミックスとか手伝ってくれた人。
俺たちのデモがネットに流出してるって。
自分も制作に参加したいってメールが来た。」
テツが焦って連絡して来た。
急遽、みんながスタジオに集まって来た。
「ええ?それって、何?」
「ライブの時、来てくれた人にデモCD撒いただろ。誰彼構わず配ったから。」
「誰かの目に止まったの?」
「そう、概ね好意的だけど。」
「俺たちの知名度が上がったって事?」
「ああ、良くも悪くも、だ。」
ミクオが言った。
凍夜は別の危惧があった。
あの男、ミコトの義父の事だった。
(絶対に奴は見つける。話題になれば、有名になれば、見つけ出して何か嫌がらせを仕掛けてくるだろう。歌詞もあの男の仕業を思わせる内容だ。)
「その北海道の人は大丈夫なのか?」
「うん、多分。」
「なんかハッキリしねぇな。」
タカヨシが心配そうに言った。
「楽曲が話題になれば、何処かからオファーが来るだろ。」
テツがスマホを見て
「会いに来るって言ってる。」
「住所、特定されてんのか?」
「うん、悪い奴じゃなさそうだ、と思って。」
「そうだよ、その人が悪い事、企んでる訳じゃないよ。」
「良い曲だな、ってネットで火が付いた、とかあるじゃん。」
「とりあえず会ってみよう。」
わざわざ遠くから出てくるんだから、と歓迎ムードで待ち合わせした。
飛行機で来ると言うので待ち合わせ場所は羽田の近くがいいか?といっそのこと空港で会う事にした。地味なアウディで迎えに行く。いきなりカウンタックでは驚くだろう。
お互いに写メで顔はわかっていたから、すんなりと会う事が出来た。なんかイメージ通りのオタク感いっぱいの人だった。
「こんにちは、あ、初めまして、だ。
テツです。」
「あ、あ、初めまして。北島三郎です。」
「それ嘘でしょ、失礼な奴だなぁ。」
喧嘩っ早いテツが言う。
「あ、すいません、北島は本当です。」
「挨拶はその辺で、キチンと話しようぜ。」
ミクオが大人の対応だ。
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