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第29話 デモCD

 ミクオは北島をスタジオに連れて行く事にした。音楽の事はスタジオで話した方が早い。 「凄い、個人でスタジオ持ってるなんて。 俺、パソコン一台で細々とやってるだけなんで。」 「俺たちだってそうだったよ。」 テツがそう言った。 「たまたま金持ちの友達がいたんだ。」 そのキースがやって来た。 「こんちは。」 金髪のイケメンに北嶋は緊張した。 ミクオの方を縋る目で見る。 「ははは、大丈夫だよ。日本語が通じるよ。 腹へってないか?何か食おう。 ウーバーで注文するよ。」 「ウーバー?北海道でも限られた所でしかやってない。東京だなぁ。」  何か特別感もなくピザを数種類とコーラを注文した。  北島はデカいリュックから古いノートパソコンを取り出した。 「見て、誰かがネットに上げたんだ。 著作権ってどうなってるの?」 「一回流れたらもう回収出来ないよ。 著作権だけはハッキリさせたい。」 「SNSに載せただけだろ。 営利目的じゃないって事?」 「いや、サイトによっては営利が発生するから 著作権に抵触する。勝手に公開したのが誰なんだ?」 「北島が見つけてくれたんだろ。 もう拡散してるよね。」 「デモCD持ってる奴だよね。 いち早く楽曲をチェックしたのが自慢になるんだ。」  みんなは届いたピザを食べながら話し合った。 「北島はリミックスやりたいんだろ。 それは凍夜の許諾があればいいんじゃね?」 「創作物は、出来た瞬間から著作権があるんだ。 勝手な事はできないけど、いったん再生されたら 世界中に拡がるのは止められない。」 「迂闊な事は出来ないね。 他者の作品も勝手には演奏できないんだ。 著作権の悩ましい所だ。」 「俺たちは何がしたいんだ?」 「原点に戻るなぁ。」 「練習してただけの頃が懐かしいな。」 「俺たちアマチュアで報酬を貰ったことがないから問題なかったんだ、文化祭とかでやっても。」 「売れるって大変だなぁ。」 「北島は売れたいんでしょ。 何者?何がやりたいの?」

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