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第31話 サブ
サブのユーチューブチャンネルを見てみた。
観音寺夢子というボカロが歌っている。その歌はサブが作詞作曲したものだという。
夢子ちゃんもイラストから全てサブが作り出したものだそうだ。踊りながら歌うアニメーションも夢子ちゃんの愛らしい声も、全部サブが作ったらしい。そのスペックの高さに驚かされる。
再生回数が多い。
「この頃やっと収益が出てきたんだ。」
ずっと引きこもりで家でも肩身が狭い思いをしていたそうだ。25才だという。
「北海道は田舎だよ。寒くて田舎。
冬は何も希望が無い。」
それで自分の妄想を形にしたら、思わずいい反応があったそうだ。
「夢ちゃんは人気あるよね。今度ゲームになるんだろう。」
「ちょっと嫌なんだよ。エロゲーみたいなんだ。
俺、漫画家になりたかったんだ。
歌作るのも好きだ。」
「サブって器用だね。何でも自分でやっちゃうんだ。」
中々興味深い人材だ、とキースは思った。
キースはこの頃、ほとんどミクオの家に住み着いている。
スタジオの隣のキースの部屋は、空いているから、サブに使ってもらってもいい、と考えた。
「サブ、これ鍵だよ。スタジオの。みんなも持ってる。隣の僕の部屋の鍵はサブだけに渡すから。倉庫みたいで物が多いけど、ベッドシーツも替えたし。クローゼットにタオルとTシャツとか下着の新しいのが入ってるから使って。
洗濯物はランドリーバッグに放り込んでおけばクリーニングして次の日にはたたんで置いてあるよ。廊下に出しておいて。」
大きなカゴを指差した。
「キース、鍵まで預けて大丈夫かなぁ?」
テツとタカヨシは不安になった。
「疲れたでしょ。今夜はゆっくり眠って、著作権の事は明日みんなで考えよう。」
テツは一抹の不安を拭えない。スタジオには高価な楽器や精密機器もある。キースの私物も残っている。
下の階にはキースの父と、会社の若い社員も住み込んでいる。大丈夫だろう、と無理矢理自分に言い聞かせた。
サブはあまりにも簡単に信用されたのが不思議だった。今はまだ配信したボカロの歌はあまり、高評価は付かず、自信があっただけに不本意だった。せっかくの夢ちゃんが可哀想な感じになっていた。このスタジオならもっと色んな事が出来るだろう。
(夢ちゃんもっと可愛くしてあげられるよ、待ってて。)
みんな帰ってサブは一人、スタジオのドラムセットを見てため息をついた。
「こんな高価なドラムセット、スゲェな。
田舎で引きこもってる間に世の中は贅沢になってるんだな。
ふん、凄い外車のディーラーだってさ。」
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