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第33話 著作権侵害
サブに送られてきたのはテツのバンドの唯一のオリジナルだった。まだ、編曲も完成していないからいいだろう、とのテツの判断だった。歌詞も短いままで物語性もない。
サブは送られてきた曲を独自にリミックスして夢ちゃんに歌わせた。凍夜の声と違う女の子の切ない声で歌う。まだ、名前もない歌。
あまり動かない夢ちゃんの暗い顔に歌がマッチしていた。動画はサブの急拵えで動かないのが、逆に哀愁を誘う。少しずつだがネットに拡散されてバズりそうだ。
ー誰の曲?原曲は?
ーダウンロード出来るの?
ー無断で拡散しちゃえば?
「ヤバっ、テツに断りにくくなった。」
言い出せないままに北海道から出て来たのだ。
ミクオが気付いた。数日後、スタジオに全員集合がかかった。
「ネットに流して、少しバズってるのは自分でわかってるな?正直に言ってくれ。」
みんながサブを見た。
「俺の『観音寺夢子チャンネル』で少し使わせて貰ったのがみんなの曲だったのか?
テツから送られてきたからいいのかな、って思った。」
今日はミクオをはじめ、キース、凍夜、ミコト、テツ、タカヨシ、そして松ちゃんが来ている。フルメンバーだ。
「まだ、未完成だから、いいか、と思った。」
テツが言い訳する。
デモCDにはスタジオでみんな集まって録音した音源がある。完成品だ。それは今の所、流出していない。
「テツ、おまえも録音に参加したのに、その前に誰かに渡すのはダメだろ。」
「ユーチューブで著作権侵害で削除出来ますよ。どこまで許可するかはこちらで判断出来る。」
ユーチューブの配信者でもある松ちゃんが言った。
「問題はどこだ?」
「もうネットでバズり始めている
「有料で配信するか?オファーが来ている。」
「俺たちバンド名もないよ。曲のタイトルも付けてない。こんなデビューの仕方はないよ。
覚悟が足りなかったな。」
ミコトがオズオズと言った。
「オレ、有名になりたくないんだ。」
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