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第38話 見つかった

 ついに見つかった。執念深いあの男。いつ出所したんだろう。きっとあの歌『苦い麦』を聞いたんだ。  サブが戻ってきて不思議そうに見た。 「ありがとう。ファンの子たち、大変だったでしょ。何か言ってた?」 「ああ、凍夜は降りて来ないのかって聞かれた。ここに住んでるのか?とも。」  サブは何も言わなかったそうだ。こんな時頼りになる。 キースが 「あいつ、刑務所から出て来たんだ。ミコトが狙いだろ。しつこいな。」 「ミコトに何かする奴なんだ?」  サブに簡単に説明した。歌の歌詞から想像して たと言う。性的虐待。  サブは怒りに震えた。ミコトにひどい事をする奴は許せない。なぜ執着するのか?  ミコトを優しく慰めたい。この手で抱きしめて。 (危ない危ない、こっちがセクハラ野郎になる所だ。) 「俺、出来るだけ協力するよ。何でも言ってくれ。」  サブにとって縁もゆかりも無いあの男に猛烈な怒りが沸いてくるのを感じた。  ソファに凍夜と並んで座ってミコトは震えている。 「どうやってここがわかったんだ? 気持ち悪い。何がしたいんだ。」  あのCDにバンドメンバーの写真は載っているが、ミコトは写っていない。作詞のところにクレジットされているだけだ。  一回見かけた凍夜を覚えていたのか。  サブはミコトの彼氏が凍夜だと知った後も、ミコトに執着していた。こんなイケメンでしかもミコトが恋人だなんて羨ましすぎる。  サブは自分が男を好きになるなんて考えた事はなかったが、ミコトを見てると男か女か、なんて事は気にならなくなった。  凍夜が羨ましいだけだ。 (俺は女の子が好きだったはずなのに。ミコトは特別だ。初めて生身の人間を好きになった。)  もう夢子はどこかに吹き飛んだ。コアなファンが付いているのに。  寝ても覚めてもミコトの事を考えてしまう。 子供の頃のミコトをほしいままに蹂躙していた奴のことが憎い。殺意が芽生える。  恋愛経験の少ないサブは思い込みが強く、妄想癖がある。

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