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第39話 ついに手を出した
ミクオがキースと一緒にスタジオに来た。いつもショールームの仕事が終わると二人で来る。
もう、ミクオの家にキースが住み着いているのはみんなの知る所だ。父のゲオルグも公認だ。
ビルの入り口、エレベーターの前に女の子がたむろしている事も、日常になった。
ミクオもバンドメンバーとして顔は知られている。
「おはようございます!」
元気のいいファンの子が声をかける。その中に似合わない中年の男がいた。
「見かけない人だな。こんにちは。
ファンの方ですか?」
ミクオが声をかけると男は走って逃げた。
キースがミクオの袖を引っ張る。
「また、来てる。ヤバい奴。ミコトの元義父。
ムショに入ってた奴だよ。」
「追いかけた方が良かったか?」
「やめてよ、何するかわからないから。」
ミクオは集まっているファン達に何かされるのでは、と心配になった。
「エレベーターの前にカメラが付いてるよ。
あとで確認して貰おう。
ゲオルグにも話しておいた方がいいな。」
話を聞いた凍夜が
「あの男、何がしたいんだ?」
キースが
「会社の若い人が一階に住んでるから、
何かあったら助けて貰える。」
ミクオと一緒に働いている連中だ。
「アイツらは腕っぷしが強いから、頼りになるよ。そんな大事にならないといいけど。」
警備会社の人と防犯カメラを確かめてみた。ほぼ毎日このスタジオの入り口に現れている。
「不気味だ。警察に言っておくか。」
ミクオは心配だったが様子を見る事にした。
事態は、そんな呑気な状況ではなかった。
エレキベースを担いだテツがやって来た。入り口にいる女の子たちにニコニコして声をかけた。
「おはよっ!いつも来てるんだね。
応援ありがとう。」
そんな和やかな雰囲気に、変な男が近づいて来た。いきなり女の子を一人捕まえて羽交い締めにした。
「わぁっ、なんだこいつ!」
「キャーっ、離して!」
咄嗟にテツが横のドアをこじ開けようとした。凄いブザー音が鳴り響く。違法な開け方に反応したらしい。数分で警備会社の人が駆け付けるだろう。
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