42 / 143
第42話 児童ポルノ
警察病院での取り調べだった。刑事の前で男の独白は続いた。自暴自棄なのか、前科のある身で露悪的な独白は続く。後の量刑に響く事も意に解していないようだ。
その頃はもう小児性愛の趣味が昂じていた。ネットで知り合った男が情報をチラつかせる。
子供のエロい写真をたくさん持っている。
「東南アジアの方は、子供にやりたい放題ですからね。きわどい写真欲しくないですか?」
彼の話はものすごく興奮する。泣き叫ぶ子供を無理矢理犯す写真に胸が悪くなるが、また、興奮の極致だ。
「おまえ、ひでぇ奴だな。こんなの好きなのか?」
「本物を襲った事はねぇよ。妄想だけだ。
あんたも同じだろ。悪趣味だ。」
口の聞き方が馴れ馴れしくなった。
「本物をやれる所もあるらしいよ。
子供を飼い慣らしているという。」
胸糞の悪くなる事を言う。私はその写真から目を離せない。好奇心は最高潮だ。
それと同時に柳奥の家族が頭を離れない。
「取引先からクレームが来てるよ。
柳奥くんの案件じゃないのか!」
「あの会社は課長の肝入りで仕事を受けた所です。何か問題起きましたか?」
「整理しているらしい。計画倒産するかもしれない。」
「だから、危ないって申し上げたのに。」
私のゴリ押しで取った仕事だった。負債は大きく、全部柳奥の責任にした。
柳奥は連日の残業で眠れない日々を強いられた。とうとうダウンした柳奥を、鬱病と上に報告した。
「彼は精神力に欠けるね。会社に与えた損失は莫大だ。」
追い討ちをかけるような厳しい処分だった。事情を知っている同僚は抗議した。抗議した人間は左遷された。ひどい人事だった。
関係者は処分された。憤って退職する者も多かった。
そんな折、流奥は行方不明になった。会社からは無責任だと、責められる。妻が矢面に立たされた。私が部下を使って追い詰めたのだ。
ネットで知り合ったあの小児性愛者の鈴木康夫をコネで入社させておいた。奴の趣味は山登りだった。
「殺してもいいよ。山ならいくらでもチャンスはあるだろう。」
数年間、柳奥は見つからなかった。鈴木康夫が殺ってくれたのだ、と確信した。
子供を抱えて困っている専業主婦の柳奥の妻に親切に近寄り、何かと力になってやった。会社の金を使いこんで、生活の面倒を見た。
親切ごかしに縛り付けて断れなくしたのだ。
失踪宣告を待って、ついに再婚を承諾させた。
あの美人の妻を抱ける。それ以上にあの男の子を自由に弄べる。私は期待に震えた。ーー
長い独白だった。
刑事は取り調べにあたって男の前科を調べ尽くしていた。横領の罪で服役した男が、ついに殺人教唆を自白した瞬間だった。
落ちぶれた男がなぜ自分を刺したのか。
「どうせ、芝居がかったあの男のやり方だ。
騙されないよ!」
ミコトは悔しかった。今一つ父を殺した証拠がない。
ともだちにシェアしよう!