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第43話 天罰

 天網恢恢疎にして漏らさず。今度は逃げ切る事は出来ないだろう。  ミコトは母、早苗に会いに来た。あの男がまたしつこく彷徨いていた事を警告した。 「母さん、あの男が刑務所を出てきてる。」 「大丈夫。私はあの頃の弱い女じゃないのよ。」  凍夜の母の個人秘書として雇われている。 「秘書の勉強もさせてもらってるの。」  専業主婦だった頃とは違う目の輝きはミコトにもわかった。  社長である凍夜の母が来た。いつもメチャメチャ明るい人だ。会うとホッとする。 「ミコトちゃん、凍夜の魂のお嫁ちゃん。 相変わらずキュートだわ。 早苗ちゃんはよくやってくれてる。  ここに住んでもらって私も寂しくないわ。」 屋敷の別棟には庭師の一家が住み込んでいる。出入りの使用人も多いから安心して欲しい、と言われた。 「それに番頭の斎藤もいるからね。」 長い付き合いの番頭がいてくれる。 「それでその男は留置されてるの?」 「多分懲役刑になると思います。 暴行事件を起こして、いろいろと別件が出て来てるようです。」  ミコトは胸糞の悪い犯罪の数々が明るみに出た事を言っている。 「あの、小児性愛者の鈴木康夫がオレの父さんを死に追いやった。決定的な証拠が無いのが悔しいです。」  鈴木は児童ポルノの入手先から組織的な人身売買に関与が疑われて再逮捕された。  それまであの男はホームレスにもなりきれず、惨めに彷徨っていたらしい。鈴木康夫が出所した事を知り、居場所を見つけて恐喝まがいな事をしていたという。 「おまえが話してた、子供を飼っている組織を警察にチクッてもいいんだぜ。  胸糞な組織と繋がりがあるんだよな。 この変態!」  世の中の闇は、同じような人間に降りてくる。 「自由に出来る子供を買いませんか?」  児童ポルノの写真を買いに行くと、サッと近寄ってくる者がいる。耳元で囁く奴が。 「どんな子がいいですか? 親は大丈夫。金で黙らせてあるから。」  鈴木はどんどん深みに嵌まった。窃盗でもなんでもして、金が欲しい。  闇の組織は海外にネットワークが広がっている。ニーズがたくさんあるという。  鈴木はもう片足を突っ込んでいる。子供を斡旋する役。人身売買だ。 「私はお前ほど病んでないよ。」  それでも男は鈴木にへばりついて何とか糊口をしのいでいたようだ。いよいよ困ったらミコトを頼るつもりだったらしい。  男の独白的自供によって児童ポルノの組織が一網打尽になりそうだった。

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