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第45話 新曲
サブの詩にテツが曲をつけた。
ミクオのギターの爪弾きから静かに始まる、暗い旋律。中盤になって爆発したようなハードロックテイストに変わる。まさに70年代のロックだ。
間奏に入るギターのリフはタカヨシの真骨頂、練習していた速弾きだ。サウンドを支えるテツのベースの安定した低音。キースのドラムが激しさを増す。
ミクオの好きなZ・Z・トップの曲を思わせる泥臭さのハード・ブギに仕上がっている。
凍夜が歌って見る。ハスキーな声が静かに語り始める。中盤一気に爆音になるが負けない声を張る。マイクを持つ手に力が入る。マイクスタンドを持って歌う凍夜は、尊敬するフレディ・マーキュリーを意識しているようだ。
ダンスで鍛えたステージパフォーマンス。
「凍夜、カッコいい!広いステージでやってほしいな。」
松ちゃんのサキソフォンが絡む。いつも絶妙な入り方だ。歌い終わって凍夜が
「松ちゃん凄く歌いやすかった。
サックスの入り方が気持ちいい。
どこで覚えたの?」
「ははは、食えない頃、ストリップ劇場で、踊り子さんのバックで吹いてたんだ。
脱ぐタイミングで入る。ズレると脱げないって怒られる。そこで覚えたんだ。」
「え?俺、ストリッパーの歌い方だったんだ。」
「凍夜も脱いだら、女性ファンが増えるぜ。」
テツが無茶な事を言う。
(凍夜が誰かに取られちゃう!)
ミコトはいつも不安だ。
「この詩、夢子ちゃんの事なの?」
ミコトが聞く。サブは赤くなって
「いや、この頃、思う事がたくさんあって頭がぐるぐるしてたんだよ。少し出口が見えて来た。」
サブは自分の恋愛対象が女性とは限らない事に気付いていた。
(なんでみんな自分をわかって欲しい、なんて思うんだろう?
自分が愛してる人に同じように愛して欲しいなんて。)
今まで自分の思いをぶつけるのは夢子だった。いつも受け止めてくれる存在。
辛い時も寂しい時も妄想の中の夢子にぶつけた。自分は二次元しか愛せない、と思っていた。
「この頃、サブの描く夢子ちゃんが少し変わって来たね。なんて言うか中性的になった。」
ネットのファンから指摘された。自分でもわかっている、作画が変わったのは。
いつも目で追ってしまう現実の人間がいる。ミコトから目が離せない。
頭の中だけで想像していた夢子が、人らしくなって来た。
ー夢子に命が吹き込まれたんだよ。
ー色っぽくなったんだ。
ー唇がリアルに誘ってるみたい。
ー前より成長してるんだ。
おおむね、ネットの評判は好意的だった。
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