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第47話 サブ 2
(人を好きになるってこんな感じか?
切なくてちょっと嬉しい。
顔を見るだけで嬉しいなんて中学生みたいだ。)
サブが年に似合わず初心な所が意外だった。
凍夜はなにか感じるところがあったのか、気になっている。
サブの描く絵がミコトに似てきた。サブの書く詩が、ラブレターになってきた。
「キース、ミクオさんも気付いてるんだろ。」
「ああ、でも、心配はいらないよ。
サブは恋愛の免疫がないんだよ。
誰か素敵な人を紹介してあげれば。」
話し合ってサブに彼女を作る会を結成した。まるで中学生のような話だ。
ネットのファンの中には、彼女候補はたくさんいるだろう。やたらに公募するわけにもいかないが。
サブは時々自分で料理する。出来るとみんなに振る舞う。小さなキッチンで今日はカレーを準備した。北海道のスープカレー、自己流だ。
「サブ、カレー作るの?オレ手伝うよ。」
ミコトが来ていた。凍夜はメンバーと打ち合わせだ。
「野菜は大きく切ってそれぞれ下拵えするんだよ、焼き目を付けて。
カレーは昨日仕込んでおいたから。
エプロンする?」
袖を捲って腕に傷があるのを見つけた。
「あ、これ、リストカットの痕。」
可愛い顔を泣きそうに歪めて何かを耐えている。
「ごめん、嫌な事、思い出したね。」
結構ディープな傷痕を見た。
「恥ずかしい。中学生の頃だった。始めたのは。
高校卒業するまで止められなかった。
こんなの甘えだよ。オレ弱虫だ。」
(ああ、抱きしめたい。)
ミコトの頭の中にある苦悩を思った。目がしっかりと合ってしまった。
(キスしたい。)
そこに凍夜が来た。
「ミコト手伝いになってるか?」
腕の傷痕に気付いてサッと袖を直した。
サブを見る目がキツい。
「出来たから食べよう。テーブル出して。」
みんなガタガタ動き出した。
「美味そう!ご飯にかける?」
「あ、冷凍のナンがあるよ。
温めてバターを塗って。」
みんな和気あいあいと食べ始めた。
「バターが美味い!」
「トラピスト修道院の発酵バターだよ。
北海道からジャガイモと一緒に送って来た。」
サブの親からだった。サブが社会に出て仕事をしている事を誰よりも喜んだのはサブの両親だった。
「サブはちゃんとした親がいるんだね。」
羨ましそうに言うミコトが愛しい。
「北海道には美味しいものがいっぱいあるよ。」
あんなに嫌だった故郷を、自慢している自分が可笑しい。
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