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第50話 サブ 5

 コスプレ少女の動画は瞬く間に拡散された。 彼女はファンの手で特定された。   ネット叩きが始まった。 ー私もサブの部屋に忍び込みたいわ。 ー『凍てついた夜』の連中、この手でいつもファンを食ってんじゃね。 ーパッと出てきて話題になって、調子扱いてんじゃねえよ。 ーいいなぁ、ファンとヤリ放題かよ。 ーこの女、知ってるよ。即売会でいつもコスプレしてる娘。キワどいポーズもオーケーなんだ。 ー有名だよ、ビッチで。 ー彼女の住所氏名が公開された。 「酷い事になってるよ。可哀想だ。やりすぎだろ。助けたいな。」  サブが真剣な顔をして言いだした。 「サブは女の子に免疫ないからなぁ。」 「図々しい奴もいるから、気をつけろよ。」  数日後、あのコスプレ少女が訪ねて来た。今度は堂々と正面から。みんなそろっていたのでスタジオに招き入れた。 「会ってくれてありがとう。 ネットに動画拡散しちゃってごめんなさい。」  女の子は高田夢、と名乗った。学生証を見せて本名だと言う。まだ、高校生だった。 「同じ夢っていう名前で、夢子ちゃんのファンになったんです。それから北島さんの写真を見て、一目惚れでした。」  本物の女の子がこんなに近くにいる。こんなに直接「好きだ」なんて言われた事がない。サブは緊張した。悪気のなさそうな顔を見て好感を持った。 「サブ、甘い顔しちゃダメだ。」  凍夜はホスト時代、思い込みの強い客に手を焼いた事がある。女性には懐疑的だ。 「高校生だって?未成年?」 「でも18才にはなったんです。 もうすぐ卒業だし。」 夢はただ謝りに来ただけではなかった。 「もう、住所特定されて、身に覚えのない嫌がらせが凄いんです。  簡単な解決方法を思いついたの。 私が本当にサブの恋人になればいいんです。」 「何がいいんだよ。また炎上するだろ。 一体、何考えてんだよ!」 キースが呆れている。  夢は一人で試行錯誤の末にとんでも無い結論に至ったらしい。 「サブ、私じゃダメですか?」 「ダメって、俺にどうしろと?」  何しろ女の子に免疫がない。サブは少し、この夢ちゃんに興味が湧いた。ミニスカートから見える太ももにそそられる。 「サブ、気をつけろ。 ネットでこの娘の評判を見たよ。  すぐ誰とでも寝るって書いてあった。」 「ひどい、そんなの信じるのね。」

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