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第51話 童貞卒業
毎日のように通ってくる高田夢は出待ちの女の子たちの話題になってネットに拡散され始めた。
我が物顔でスタジオに入ってくる夢にメンバーから苦情が出ている。
「サブ、勝手に中に入れるなよ。」
夢は来るたびに、何かを持ち出す。
タカヨシのギターのピックだったり、スコアのコピーだったり、小さなものだが、よくないことだ。サブの部屋に飾ってある夢子のアクスタを持ち出そうとした。こういう事はエスカレートして行く。
「アタシ、サブの彼女だってみんなに発表してもいいかな?」
「いいわけないだろ。サブ、本当なのか?」
テツが驚いた顔で聞く。
「既成事実があるのか?どこまでいったんだ?」
「えーと、麻布十番まで。」
「そういう事じゃないよ。シャレになんねぇよ。」
「ふざけんな!寝たのか?」
一瞬サブは気まずそうな顔をした。
(あーあ、サブ、やっちまったのか?)
テツとタカヨシは顔を見合わせた。
大人なんだから個人の自由だと言っても、あまりにも展開が早すぎる。
サブのパソコンのパスワードも知ってるようだ。勝手に開いている。
「パスワードなんか知ってんのか?
サブ、教えたの?」
「だってサブがいいって言ったんだよ。私たち付き合ってるんだから。」
「サブ、そうなのか?」
「彼女がいたっていいじゃない。」
夢がいちいち口を出す。
「あんたは黙ってて。ネットに公表するつもりなのか?」
タカヨシは高校時代から付き合っている彼女がいる。出来た彼女で、有名になっても決して周りに言いふらしたりしない。
スタジオに来ても遠慮して勝手な事はしない。たまに食事を用意してくれるだけだ。
タカヨシも彼女を大切にしている。
「そういう事じゃないんだよ。
夢さん、勝手な事をしないでくれ。」
テツがキツい言い方をした。
「サブ、責任取れんのかよ。どうすんだよ。
結婚でもするって言うのか?」
サブは誘惑に勝てず自分の個室で初めて夢とセックスをした。思ったより嫌な気持ちになった。あまり快感はなかった。
夢は初めてのサブを嘲笑うように心無い言葉をかける。
「サブ、初めてだったの?天然記念物だね。
受けるぅ!」
慣れた感じの夢にがっかりした。
手首に数本の切り傷があった。
「リスカの痕。驚いた?」
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