54 / 143

第54話 盗作?

 ネットに覚えのあるフレーズが流れている。SNSには素人でも楽曲を公開出来る。 「俺が書き殴ったフレーズだ。 所々覚えている。短いけど、俺の、だ。」  タカヨシの盗まれた楽譜のものだった。 ご丁寧にサブのパソコンにあった歌詞がくっついている。 「誰だよ。これは盗作だ。」  サブには犯人がわかった。 「夢ちゃんだ。こんな曲にしたのか。」  みんな集まってどうするか考えた。 「ちゃんと楽曲らしく完成させて発表しよう。」 サブは夢に連絡を取ろうとしているが、つかまらない。この頃ここにも来なくなっている。  徹夜でリミックスを完成させた。 「不本意だな。明らかに練習不足だ。 人前に出せるもんじゃないね。」  ミクオが厳しく言った。 「ちゃんとやろうぜ!」  夢ちゃんがボカロの夢子と知り合いだと聞いた先輩が冗談で 「なんか楽譜とか盗んで来いよ。」 間に受けた夢は実行した。  売れないバンドの先輩たちは面白がって、ツギハギの曲をネットに流した。 「アタシなら、スタジオにも出入りできるよ。」 「自慢かよ。何か金目のもの、持って来いよ。」 と言われて物色したのだった。 (フィギュアやアクスタなんかは売れそうだったのに。)  キースのものらしいアクセサリーを少し持ち出した。金持ちの坊ちゃんは、高価なアクセサリーを無造作に洗面所の引き出しに放り込んでいた。 (こんな事、ダメだよね。犯罪だ。もう止めよう。) いつもドキドキしながら持ち出して、今更止められなくなっていた。 「夢ちゃん、それでいいの? おまえはそれでいいの?」 久しぶりに来たスタジオ。サブに見つかった。 目を見て真剣に言われた。 「サブ、あの、アタシ・・」 ポケットに手を入れられて太い銀のネックレスチェーンを引き出された。 「これ、なんだよ。キースのクロムハーツだ。」 サブは悲しそうに夢を抱きしめた。 「えっ?何すんの?」 「金がないのか?キースのものは返しな。」 サブは自分の財布から札を全部抜いて夢に持たせた。 「脅されてるのか?悪い奴に。」  夢は泣き崩れた。サブは受け止めてはくれなかった。 「俺たち、恋人じゃなかったんだ。 もう二度と会いたくない。ここには来るな。」 初めて見るサブの冷たい顔だった。

ともだちにシェアしよう!