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第54話 盗作?
ネットに覚えのあるフレーズが流れている。SNSには素人でも楽曲を公開出来る。
「俺が書き殴ったフレーズだ。
所々覚えている。短いけど、俺の、だ。」
タカヨシの盗まれた楽譜のものだった。
ご丁寧にサブのパソコンにあった歌詞がくっついている。
「誰だよ。これは盗作だ。」
サブには犯人がわかった。
「夢ちゃんだ。こんな曲にしたのか。」
みんな集まってどうするか考えた。
「ちゃんと楽曲らしく完成させて発表しよう。」
サブは夢に連絡を取ろうとしているが、つかまらない。この頃ここにも来なくなっている。
徹夜でリミックスを完成させた。
「不本意だな。明らかに練習不足だ。
人前に出せるもんじゃないね。」
ミクオが厳しく言った。
「ちゃんとやろうぜ!」
夢ちゃんがボカロの夢子と知り合いだと聞いた先輩が冗談で
「なんか楽譜とか盗んで来いよ。」
間に受けた夢は実行した。
売れないバンドの先輩たちは面白がって、ツギハギの曲をネットに流した。
「アタシなら、スタジオにも出入りできるよ。」
「自慢かよ。何か金目のもの、持って来いよ。」
と言われて物色したのだった。
(フィギュアやアクスタなんかは売れそうだったのに。)
キースのものらしいアクセサリーを少し持ち出した。金持ちの坊ちゃんは、高価なアクセサリーを無造作に洗面所の引き出しに放り込んでいた。
(こんな事、ダメだよね。犯罪だ。もう止めよう。)
いつもドキドキしながら持ち出して、今更止められなくなっていた。
「夢ちゃん、それでいいの?
おまえはそれでいいの?」
久しぶりに来たスタジオ。サブに見つかった。
目を見て真剣に言われた。
「サブ、あの、アタシ・・」
ポケットに手を入れられて太い銀のネックレスチェーンを引き出された。
「これ、なんだよ。キースのクロムハーツだ。」
サブは悲しそうに夢を抱きしめた。
「えっ?何すんの?」
「金がないのか?キースのものは返しな。」
サブは自分の財布から札を全部抜いて夢に持たせた。
「脅されてるのか?悪い奴に。」
夢は泣き崩れた。サブは受け止めてはくれなかった。
「俺たち、恋人じゃなかったんだ。
もう二度と会いたくない。ここには来るな。」
初めて見るサブの冷たい顔だった。
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