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第56話 サブ
「また夢子と二人だね。」
サブはフィギュアの夢子に話しかけた。人間の夢ちゃんはサブの心に深い傷を残して行った。
傷と言うには甘い思い出だった。初めての相手だった。あんな事をさせてくれた。
サブは不思議な気持ちだった。憎む事は出来ない。短い間でも、愛し合ったと思う。
「夢にもありがとう、と言いたい。」
また、寂しい日々がやってくる。本物の温もりを感じられる相手は大切だ、と知った。
「俺も恋人欲しいなぁ。」
テツが大声で言う。松ちゃんはどうしているのだろう。一人で寂しくないのかな?
松ちゃんの事をあまり知らない。
スタジオに松ちゃんが来た。
「松ちゃん恋人いないの?」
「ああ、私は結婚してるんですよ。」
みんな驚いている。
「私、子供もいるんです。まだ小さいけどね。」
「奥さん、音楽活動に理解あるんだね。」
「ええ、それで助けられていますよ。」
ひとしきりみんなの質問攻めにあっていた。
「松ちゃんは高校の先輩だったけど、知らなかった。随分早く結婚したんだね。」
テツが不思議がる。
「カミさんは同級生、吹奏楽部のフルート奏者だよ。テツもタカヨシも知ってるだろ、ミカちゃん。」
「えーっ?あのマドンナのミカ先輩!
みんなの憧れの!」
「音大時代に学生結婚したんだ。
子供が出来たから。」
みんな二度びっくり。
ミコトがシュンとしている。子供の話はミコトを悲しませる。
凍夜が気付いてミコトを抱き寄せた。
「大丈夫だよ、気にするな。」
ミコトは悲しくなってしまう。
「凍夜がいてくれるのになんで悲しいんだろう。」
「バカだなぁ。」
凍夜はミコトがいれば他に何もいらない。悲しくさせるのが辛い。
二人が寄り添っているのは凄く絵になる。
思わず見惚れてしまう。
ミクオとキースが笑いながら見ている。
「凍夜とミコトは可愛いカップルだな。
ディアボラのお客さんに見せたいよ。」
ミコトは気になることがあった。
「もし、バンドの仕事で、メンバーにゲイカップルがいるってわかったら困るんじゃないの?
隠し通さなければいけないの?」
「そうか、日本はまだそこまで世論が成熟してないか。」
ミクオが難しい顔をして言った。
多様性を認めあいながら、共生をする所まで行っていない。
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