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第57話 カミングアウト

 遅かれ早かれ凍夜とミコト、キースとミクオの性癖は暴露されるだろう。  物好きなマスコミが張り付き始めた。自称ジャーナリストたち。出来高払いのフリーな奴ら。  ハゲタカのようにどんなスキャンダルも見逃さない。少しでも高く情報を売りつけようと見張っている。 「俺たちのバンド、そんなに有名じゃないよね。 なんでマスコミが張り付いてるの?」 キースや凍夜は、いかにもスキャンダラスな美貌の持ち主なのだ。本人たちは自覚がない。 「なんか写真週刊誌に載ってるよ。」 テツが丸めた雑誌を持って入って来た。 「キースとミクオだ。手を繋いで買い物してる所。いつ撮ったんだろう?」  二人が麻布の高級食料品店て仲良く買い物をしている所をバッチリ撮られていた。  まるで新婚夫婦のようにミクオと腕を組んで楽しそうにしている。  後を付けられていたようで、あのマンションに入る所までしっかり撮られていた。  肩を抱かれてキースが可愛くなっている。 見出しに 「バンド『凍てついた夜』のメンバーは同性愛者か?一緒に暮らしている。  他にもカップルがいるようだ。」 などと書かれている。 「気がつかなかったのか。」 「気をつけようがないよ。 あいつらずっと見張ってるもん。」  スタジオに全員集まった時に、話し合った結果、隠さないことになった。 「いいの?仕事に差し支えない?」 「大丈夫でしょ。そんなヤワな仕事してないよ。」 ミコトが強気だ。  次の週には、また暴露記事が出た。 「ボーカルの凍夜は元売れっ子ホスト。 作詞担当のミコトは現役のホスト。」 「美味しい話題だと、マスコミが食いついてきたな。」 ミクオが笑っている。 「過去を暴いても、面白いのは最初だけだ。 すぐ終わる。忘れられてしまうんだ。 スキャンダルは鮮度が命、だからね。」  無理に隠そうと、コソコソしない方がいい、とミクオは言った。  それでメンバーはいつも通りに過ごしている。 ミクオの落ち着きに、畏敬の念すら覚えたキースだった。 (ミクオは僕と暮らしてる事を隠さなくていいって言った。ファティにも話してくれたんだ。)

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