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第60話 傭兵

 あのミクオの偽装結婚の相手だった京子ママのトラブルを救ったのは、陰のフィクサー、藤尾集蔵だった。  金も権力もある。極道、新宿桜会の佐倉大五郎組長は盟友だ。  泣く子も黙る、知る人ぞ知る、この国で商売をやるなら絶対に敵には回せない男。  経済は一部の人間が握っている。自由主義社会の可能性は、資本主義社会の歪み、でもある。    そんな強面の藤尾には、惚れた男がいる。 深谷名都(ふかやめいと)。元傭兵で今は藤尾のボディガードだ。  チャイマのチンピラに何回も狙われている。以前、名都が身代わりに刺されたこともある。身辺警護が必要な藤尾のそばを離れない。  24時間体制でガードしている。公私共に必要な人物だ。  藤尾は、ここ『ディアボラ』の太客でもある。レオンがお気に入りだ。  銀座のクラブ『花包み』の千堂ママは藤尾にゾッコンだったが、名都に盗られた、と語り草になっている。千堂ママの引き合いで藤尾もディアボラの客になった。その千堂ママの懐刀がミクオの元妻、京子だった。  今はミコトがディアボラで働いている。 その夜は藤尾集蔵が来るので店は厳戒態勢だった。 「なんか殺気立ってるね。」 ヘルプに入った淳と零士に聞いてみると、そういう事だった。  ミクオはいかつい雰囲気の男だ。 VIP席から気配を察して名都が出て来た。  ミクオと名都の邂逅。 「あっ!ミクオ?立花澳門?」 「名都、おまえか?生きてたのか。」  その場にいた者たちが暫し硬直した。 二人は駆け寄って、ハグしている。 「誰?知り合い?」  凍夜とミコト、キースが何事か、と見ている。 いち早くキースが気付いた。 「もしかしてミクオの昔を知ってる人?」  身にまとう雰囲気が似ているミクオと名都。 ミクオがこっちを見て、どう紹介したらいいのか 困っている。  名都は落ち着いて 「立花さんのお友達ですか? 私は深谷名都と申します。古い友人です。」 そつなく挨拶する。 「そう、私が海外で働いていた時の友人だ。」 ミクオも大人の余裕で答えた。  簡単な近況を伝え合い、固い握手をして席に戻って行った。 「凄い!殺気を感じたよ。何者?」  凍夜の疑問に笑いながら、 「昔の友人だ、って言ったろ。」 「何処で知り合ったの?」 「カンボジアか、アフガンかな?」

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