64 / 143

第64話 ドイツへ、そして帰国

 その後、ミクオはエンジニアの腕をかわれて、ミュンヘンへ行った。そこで素晴らしい車と出会う。ランボルギーニ。イタリア車だが、縁あってゲオルグの元、一緒に仕事をする事になった。  そして日本に帰って来た。 「日本でショールームを立ち上げるよ。 1970代のスーパーカーブームで日本に進出したが続かなかった。今度は本物の魅力を広めるよ。ミクオ、日本に帰るんだ。」  ゲオルグのすすめで帰国を果たした。名都の消息は依然わからなかった。 「辛い事だったんだね。 愛してたの? でも、名都さん生きてたね。」  ミクオに抱きついても不安は消えない。 「ねぇ、今でも愛してるの?名都さんの事。」 何回も聞いてしまう。 「今はおまえだけだよ、キース。」 (つらい思い出なのに、何度も言わせてしまう。 僕はガキだ。  自分の大事なものを取られたくない。 きっと、ミクオに嫌われちゃう。) 「キース、私たちの家に帰ろう。」 ミクオに手を取られて立ち上がった。 「バカだな。昔の事だよ。」 頭を撫でられて抱きしめてもらった。  私たちの家、と言ったことにホッとした。 「早く帰って愛し合いたいよ、ミクオ。」 (名都さんもこんな事言ったのかな。) そのゴツゴツした手を握って、そんな事を思う。 自分の子供っぽさが嫌になる。  数日後、藤尾さんから手紙が届いた。 立派な封筒にミクオの名前が書かれていた。 何かの招待状のようだった。 「なんか立派な手紙だね。今どき手紙なんて凄い。怖いみたい。開けてみて。」 「ああ、なんだろうな。あの藤尾さんから貰う手紙?何かのパーティの招待のようだ。  お二人で、って書いてある。」 「二人一緒のご招待なんて、嬉しい!」

ともだちにシェアしよう!