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第64話 ドイツへ、そして帰国
その後、ミクオはエンジニアの腕をかわれて、ミュンヘンへ行った。そこで素晴らしい車と出会う。ランボルギーニ。イタリア車だが、縁あってゲオルグの元、一緒に仕事をする事になった。
そして日本に帰って来た。
「日本でショールームを立ち上げるよ。
1970代のスーパーカーブームで日本に進出したが続かなかった。今度は本物の魅力を広めるよ。ミクオ、日本に帰るんだ。」
ゲオルグのすすめで帰国を果たした。名都の消息は依然わからなかった。
「辛い事だったんだね。
愛してたの?
でも、名都さん生きてたね。」
ミクオに抱きついても不安は消えない。
「ねぇ、今でも愛してるの?名都さんの事。」
何回も聞いてしまう。
「今はおまえだけだよ、キース。」
(つらい思い出なのに、何度も言わせてしまう。
僕はガキだ。
自分の大事なものを取られたくない。
きっと、ミクオに嫌われちゃう。)
「キース、私たちの家に帰ろう。」
ミクオに手を取られて立ち上がった。
「バカだな。昔の事だよ。」
頭を撫でられて抱きしめてもらった。
私たちの家、と言ったことにホッとした。
「早く帰って愛し合いたいよ、ミクオ。」
(名都さんもこんな事言ったのかな。)
そのゴツゴツした手を握って、そんな事を思う。
自分の子供っぽさが嫌になる。
数日後、藤尾さんから手紙が届いた。
立派な封筒にミクオの名前が書かれていた。
何かの招待状のようだった。
「なんか立派な手紙だね。今どき手紙なんて凄い。怖いみたい。開けてみて。」
「ああ、なんだろうな。あの藤尾さんから貰う手紙?何かのパーティの招待のようだ。
お二人で、って書いてある。」
「二人一緒のご招待なんて、嬉しい!」
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