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第65話 祝言
それは藤尾さんと名都の結婚式の招待状だった。ミコトは藤尾さんの事を知っていそうなディアボラのレオンに話を聞くことにした。
ミクオを誘って『バー高任』に行ってみる。
「いらっしゃい。」
傑がカウンターの中から出て来て出迎えてくれた。ミクオに敬意を表してくれたようだ。
今でも語り草になっている盛大な合同結婚式の話を聞いた。
「ゲイのカップルで堂々と結婚式を挙げようと、小鉄さんが音頭をとってくれたんだ。」
「あ、小鉄さんって『タイニーアイアン』の社長?ヤマトが働いてる。」
ヤマトとタケルは、東京でのミコトの親代わりだ。ミコトに愛し合っているゲイカップルの美しさを教えてくれた。
「美容師だったね、ヤマトくん。」
傑はヤマトとタケルのカップルを知っている。
タケルは傑の影響でバーをやっている。
「なんかみんな知り合いだね。
ディアボラのみんなが凄い披露宴だったっていうんだ。」
ミコトは大体の話を聞いた。
ゲイのカップルが6カップル、総勢12人で、カミングアウトを兼ねて盛大な披露をした話。
ディアボラを貸し切って政財界の大物が揃ったという。あの奥のご老人も然り。
ミコトは直接は知らないが、日本を牛耳る存在だと聞いている。
そしてご老人、子飼いの藤尾さんとその関係者。反社の中でも、まともな組関係の新宿桜会から代行で片桐若頭が参加したという。
組長の佐倉大五郎が懲役のための代行だった。
そしてその頃、荒っぽい組織からチャイニーズマフィアのトップ、李というボスもきて、一触即発のようだったそうだ。
錚々たる顔ぶれは、今も語り継がれている。
傑に招待状を見せた。驚いた事に傑にも招待状が来ていた。
「今回は、純粋に藤尾さんと深谷さんの祝言を挙げる事が目的だと思います。」
藤尾さんは、莫大な資産を持っているし、その力は金だけではない。人脈も,権力も、だ。
以前の披露宴はマスコミにも公開されていたけれど、今回は本気の跡目披露になるだろう。佐倉組長の出所を待っての事だった。
傑の読みは中々だった。堅気にはわからない奥の事情のようだ。
「私も詳しい訳ではありませんが。祝言は厳選した身内だけが出席を許されるはずです。
その後のパーティでは楽しい余興が用意されてるかもしれませんね。」
「今回、なぜ私が招待されたのか、一抹の不安を感じます。傑さんはいかが、お考えでしょうか?」
「事情を伺って思うのは、傭兵時代の名都さんと、立花さんの関係でしょうか。
藤尾さん流の、ケジメ、でしょう。」
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