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第72話 偶然の出会い
店の中で『凍てついた夜』のメンバーは、かなり目立っていた。
その時ドアを開けて女性たちが数人入って来た。
「あ、凍夜。バンドの皆んなもいる。」
入ってきたのは凄い美女集団。あの『アンジー』の嬢たちだった。
「マリア、ナザレもいる。他の女の子は名前覚えてないな。」
「相変わらずね、嫌な奴、凍夜。」
他の娘が
「マリア、紹介して。イケメン集団。」
席を作ってもらって合流した。今日は松ちゃんもいる。ミクオとキース、凍夜とミコト、テツとタカヨシ、サブ。全員集合だ。
アンジーの嬢は、過去に凍夜が手を付けた女の子がほとんどだったが、ナザレだけは凍夜の毒牙にかかってはいない。ナザレの隣に座ったテツが話しかけている。
ナザレとテツは連絡先を交換した。帰りは元気いっぱいのテツだった。
「俺、銀座初めてだ。大きな電気屋さんがあるよ。」
サブには秋葉原がよかったかもしれない。
「みんなで出かけるの、初めてだ。」
ミコトが嬉しそうだ。
家電量販店も面白かった。みんなオーディオコーナーから動かない。興味深い新製品があるのだ。その隣、アニメ関連コーナーに大きな観音寺夢子のフィギュアが飾られている。
「あ、夢子。」
サブが駆け寄って、そばにいたお客さんが驚いている。
「あっ、北島さん、夢子の!」
周辺の客がざわつき始めた。
サブは意外な有名人だった。
「サインしてください。」
嫌がらずに丁寧に似顔絵つきでサービスしているサブは好感度マックスだ。
「サブだ!」
人だかりが出来てしまった。
「俺たちのバンドよりサブの方が名前売れてんなあ。」
凍夜がガッカリしている。
「凍夜は売れたいの?」
「事務所がうるさいじゃん。」
「やっぱ、新曲出さないと、だな。」
「オレ、結婚式で閃きそうなんだ。」
ミコトが言った。
「夢子は暗いイメージですね。」
サブが夢子ファンらしき女子に捕まっている。
「俺が根暗なんだよ。
もっと楽しい夢子がいいかい?」
「いえ、私は暗い方が共感を持てるので好きです。」
まっすぐにこちらを見てくる女子にサブはドキドキしてしまった。
「私も動画作ってるんです。」
そう言って手製の名刺をくれた。
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