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第81話 ネクスト

「ブラボーッ、ブラボーッ! 手を叩きながら大声で叫んでいる男は、あの小池とかいう奴だ。一人で目立っている。  だんだん、熱狂も収まって、ライブは終わった。あの小池社長だけが興奮してバンドに話しかけてくる。  メンバーはテーブルに着いて飲み物を貰っている。みんな脱力して、抜け殻のようだ。 「君たち、どこかの事務所と契約している? 私の所においでよ。悪いようにはしないから。」 「頑張ったんで、もう今日は放って置いて欲しいんだ。」 ミクオが強く言った。でも小池は引き下がらない。 「おーい、女の子こっちに付けて。」  なんだか嫌な雰囲気だ。業界人臭がプンプンする。  ナザレたち数人がやって来た。他にも知り合いのお客さん達が、たくさん来ているので挨拶で忙しそうなのに。 「ねぇ、綺麗どころだろ、下の階のキャバ嬢だよ。円城寺が集めた別嬪さん達だ。」  小池社長は馴れ馴れしくナザレの肩を抱いて 「君たちも気に入った娘がいたらお持ち帰りしていいんだよ。な、おまえたち、仕事だろ。」 「パッチーン!」 ナザレが立ち上がって、いい音をさせて小池社長をひっぱたいた。他の嬢も 「いい加減にしろよ。 アタシたち、枕はやらないよ!」 啖呵を切った。マリアだった。  そばで見ていた凍夜は 「いい女だねぇ。 マリアの気風(きっぷ)に惚れちゃうね。」  他の娘達もわいわい騒ぎ出した。会場には本物の極道がたくさん来ている。藤尾さんの賓客に粗相がないように目を光らせている。 「どうした?」  佐倉組長が片桐若頭を連れて歩いて来た。 「あんた、めでたい祝言の席で何やらかしてんだ?どちらの御身内さんで?」 ドスの効いた声に、小池社長は小さくなっている。 「音楽事務所やってる小池さんだって。」 「ほう、何ぼのもんじゃ? 今日は他にも、芸能関係者が来ているからな。あんたも挨拶せんと、な。」 組長はすごい貫禄で、大手事務所の名を上げた。  小池社長は肩肘を張って、 「ネクスト、だ。円城寺を呼んでくれ。」  円城寺は忙しそうで、嫌な顔をした。 「は?ネクスト?小池社長? 特に懇意にしてはいませんが。」  

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