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第87話 あゆむくん 2
「初めて銀座の家電量販店で会った時は、大人っぽかったね。18才くらいには見えたよ。背も高いし。」
「あきれた?ボクもうここに来てはだめ?」
「そんな事ないけど、、親御さんにちゃんと言ってからだよ。ここの事も、俺の事も。」
サブは焦った。子供を連れ込んでしまった。
犯罪になるのか?
(断じて、無い!)
ちょっと不安になった。今度は子供をたぶらかして週刊誌に追いかけられるのか。
「ボク、夢子が好きなんだ。あんな娘になりたい。」
あゆむくんの動画を見せてもらった。スマホに保存されている色々な景色。自然を切り取ったものが異彩を放っている。
「あゆむくんには、世界がこんな風に見えているんだね。」
素直になったあゆむくんは可愛い。
「うん、外の世界は、もっと深いんだ。
生命に溢れてる。」
「才能を感じるね。絵を描いたりもするの?」
「うん、この頃はネットではAIが描いてるのが多いんだけど、ボクは使いたくはないんだ。」
カバンからスケッチブックを出した。色々なラフが描かれている。
「いいねぇ。あゆむくん、ここで描くかい?」
スタジオにサブの使うモニターとペンタブがある。
簡単な使い方を教えると、あゆむくんは夢中になって描き始めた。
スマホのアプリで鍛えているから覚えるのも早い。
「恐るべき子供だ。」
「ボク、他の子供と違うんだ。」
悲しそうに言う。
「同じ学年の子より大人っぽいってよく言われる。背も伸びてクラスで一番大きい。」
何より話が合わないそうだ。
「みんな、幼稚なんだ。
ボカロの夢子がエッチだって。」
確かに大人向けのボーカロイドは露出も多いし、胸も大きい。サブの妄想をデフォルメして、創り上げた夢子だ。
「クラスの子が、観音寺夢子はエロだって。」
シールを持ち物に貼るのも禁止された。
「あゆむはエーロ!エロ!」
「みんなガキ過ぎるんだ。」
ハグして頭を撫でてやった。
「泣くなよ。
あゆむは悪くないよ。」
じんわりと愛情が湧いてくるのを感じた。
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