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第94話 親に会う

ーあゆむくん、今週の土曜日に、君のお母さんに会いに行くよ。お家にいらっしゃるかな。ー  ミクオに相談した。サブは近くに相談出来るマトモな大人がいてくれた事に感謝した。 「相手が中学生じゃ、サブが完全に悪いよ。 相手の親は、もう付き合うな、と言ってるんだな。何か、賠償請求とかは無いのか?」  弁護の仕様もないから弁護士を連れて行っても意味がない。一人で行って来い、と言われた。 「サブはこれからどうしたいの?」 キースも心配してくれる。 「わからないよ。 ただ、あゆむくんが好きなんだ。」 「それじゃ子供みたいだ。 大人には通じないよ。」  もう二度と会えないのだろうか。 「俺自身が、ガキだ。」  土曜日、大体の場所はわかっている。 浦和駅に降り立った。車にしようか迷ったがやめた。しばらく歩いて住宅街に来た。  瀟洒な一軒の家。幸せそうな家。 [佐藤]の表札を見つけた。  ピンポーン!音と同時にあゆむくんがドアを開けて飛び出してきた。  サブの手を取って嬉しそうに玄関に招き入れる。サブはこういう普通の家には慣れていない。 緊張している。 「こんにちは。北島です。」 「お上がりください。」  上品な女性が出迎えた。あゆむくんの面影がある。電話で話した母親か。  リビングルームのソファを勧められて座る。どうもお尻が落ち着かない。 「あのぅ。」 同時に声が出た。 「ウチのあゆむがあなたの所に 入り浸りで困ってますの。」 「ええ、はい、お休みの日に作画を手伝ってもらっています。そんなに頻繁に、ではないと思いましたが。」 「いいえ、毎週です。 この前は帰りが遅くて心配しました。 海を見にいったとか?」 「ああ、申し訳ありません。事前に承諾も得ず、配慮に欠けていました。」 「もう、あなたの所には行かないように言い聞かせました。 でも、親の目を盗んで行ってしまうかもしれません。」 「なぜですか?ユーチューブの動画の作画を手伝ってもらうのがいけませんか?」 「この子は中学受験もやめてしまって、普通の公立中学に行ってます。  学校でも、孤立しているらしいんです。」  初めてそこに気が付いた。

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