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第98話 許し
「こんなに思い詰めてるんだ。
頭ごなしに反対するのは良くないだろう。」
あゆむの父の言葉に母は納得いかないようだ。
「待って!まだ13才なのよ。」
「あゆむはどうしたいんだ?」
うなずくと涙が溢れる。サブにはそれがとても尊い。手を伸ばすとあゆむが抱きついてくる。
「一緒にいたい。サブのそばにいたい。」
「学校はどうするんだ?まだ義務教育だよ。」
イヤイヤをするように首を振る。サブの手を握りしめて離さない。
父親は、ものわかりのいい、提案をした。
「よし、週末だけ北島くんと過ごす事を認めよう。他の日はキチンと学校へ行くんだよ。
北島くんはそれでいいのか?」
凄く大人なんだと感じた。
この人には勝てない。勝とうなんて思わない。
「あなた、なんて事を。」
母親は絶句している。
「私達も子離れする時が来たんだ。
あゆむが大人になるためなんだ。
親が執着してはいけない。」
優しく妻の肩を抱いて、言い聞かせる。
「何も、あゆむがいなくなるわけじゃない。
また私たちも二人の生活を楽しもう。」
素敵な親だ。
「北島くんもあゆむも約束して欲しい。
自分のやるべき事をやる。
必ず幸せな関係を築くんだよ。」
父親の提案は、必ず学校を続ける事。学業をおろそかにしない事。やるべき事をやる。
そのうえで、週末の土日はサブのところで過ごしてもいい、というのだ。
サブとあゆむは顔を見合わせた。
「パパ、サブのところにお泊まりしてもいいの?」
「あなた、それは!」
母親が焦っている。父が笑って母を抱き寄せた。
「私たちも出会った頃は、片時も離れたく無かったろう?思い出してごらん。」
両親は大恋愛の末、結婚したのだそうだ。
「パパ、ありがとう!」
サブは父親のあまりにも物分かりのいいことに驚いた。
「そんな事、本気にしていいんですか?」
「私たちだって恋をして結ばれた過去がある。
自分の宝物のような息子の幸せを願っているんだ。」
平日は毎日キチンと学校に行く事。家にキチンと帰ってくる事。土日はサブの所に泊まってもいいが節度ある時間を過ごす事。
サブから将来に役立つネット環境を学ぶ事。
「そして北島くん、必ずあゆむを幸せにする事。泣かせないで。」
二人で幸せになると約束させられた。
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