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第101話 グレース
グレースはギニア人だと言う。真っ黒な肌のふくよかな女性だ。ギニアではシャーマンでもあると言う。ミコトは
「レオンと傑の話を聞いて、オレもタトゥーに興味を待ってたんです。
東京に来た時から、タトゥー入れたいと思ってたんで。」
「やめておきな。想い人がいるんだろ。」
意外なことにグレースはタトゥーを薦めてこなかった。レオンが
「グレースはタトゥー以外にも凄い力があるんだよ。占いの。」
ヘルプで呼ばれたテツも同席して、話は盛り上がった。おずおずとテツが話し出した。
「あのぅ、俺、気になってることがあるんです。」
「ストップ。何も言わないで。手を貸して。」
グレースに手を握られてテツは目を閉じた。
「あんたは、心配な事がある。
好きな人のことだね。」
なるほど当たっているが、ここまでなら万民に当てはまるだろう。
「あんたの周りには人が多過ぎる。
その人は不安定になっている。
仕事が辛いような、、その人も恋に悩んでいる。
あんたではない相手に。」
漠然としてピンと来ない。誰だってこんな気持ちはあるだろう。
「でも、あんたは本当にその人が好きなのかい?
気になってるのは違う方向にいる人だよ。
自分に正直になりな。」
テツは考えてしまった。
「意味深でわかりづらいな。
どう捉えたら良いんだろう。
気になってるのは二人。でもどちらも脈がない。上手くいく可能性の無い相手なんです。」
テツは即座にミコトとナザレを思い浮かべた。
そばに座っているミコトを見た。相変わらず可愛い顔をして見つめてくる。
ミコトはあまり目が良くないらしい。相手をじっと見つめる癖がある。それが女性客に人気だったりする。
スタジオで、たまにメガネをかけている。
それがテツには、萌え、だ。
そしてアンジーの嬢、ナザレ。気立てのいい娘だ。そのナザレは凍夜が忘れられないらしい。
一度でいいから抱かれたかった、と思っている。ホスト時代の凍夜なら抱いてくれたかもしれない、と後悔している。
ナザレとミコトと凍夜をめぐるテツの片思い。
グレースは見事に言い当てている。
グレースの占いを読み解くのは誰だ?
鍵を握っているのはレオンか?
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