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第110話 パク・ジヌ

 ジヌはミコトと凍夜がゲイカップルなのを知ってショックを受けていた。韓国でもBLは流行っている。でも、それはイメージの中だけだ。Kポップアイドルがカップルのふりをする。ジヌも興味はある。  営業時間が終わって、凍夜が迎えに来ている。ジヌに紹介しようと店に呼び込んだ。  いつもは控えめに、裏口で待っている。客に見つかると面倒だ。 「新人のパク・ジヌ。凍夜のファンだって。 ダンサーだってさ。」  ジヌは緊張して固まっている。 「や、初めまして。凍夜だよ。」  ジヌの握手の手が震えている。 「パク・ジヌです。凍夜、凄い綺麗です。」 「え?俺?」 「ボク、ファンです。」  スタジオに連れて行く事になった。 こういう時、住まいが一緒なのは、便利だ。テツはスタジオの下の階に住んでいる。   凍夜のイヴォークに乗り合わせて帰ってきた。 「ジヌはどこに住んでるの?」 「えーと、円城寺社長のマンションにいます。」 「だめだ!絶対ダメ!」 みんなが同時に叫んだ。  レオンがホストになりたての頃、円城寺と一緒に住んで酷い目に合ったことはみんな知っている。 「今夜は俺の部屋に泊まれ。 もう円城寺の所に行ったらダメだよ。」 (奴はゲイだ。)  テツは焦った。もう手遅れか? 「ジヌ、円城寺と何かあるの?」 「何かって?」 「身体を要求されたとか。」 「ボク、まだそんな関係じゃないから。」 「これから、関係するかもって事?」 ジヌを守りたい、などと考えてしまった。  キースとミクオが来た。 「お、みんな揃ってるな。セッションやろう。」 「ジヌに歌ってもらおう。」 「えっ?無理です。凍夜の前で、なんて無理。」  ミクオがギターを爪弾く。得意のブルースコード。  躊躇いがちに、ジヌが甘い声で何かのブルースを歌い出す。 「いいね,いいね。即興でやれるのがいい。」 「ジヌ、センスあるね。」  テツのベースが入る。 「チョッパーベースじゃないよ。」  腹に響く低いリズム。安定のリズム。 ジヌが何か、愛の歌を歌う。不思議な曲調だ。 「韓国の歌?」 「いえ、そうでもない。ちょっと影響は受けてるけど、祖国の歌ではないよ。」 「いいね、新鮮だ。ジヌの歌、味がある。 曲は自分で作ったの?」 「そう、基本ブルースなんだけど。」 バンドに溶け込んでいる。

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