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第112話 パク・ジヌ 3
あっという間にジヌは仲間になった。
「なんだか簡単だな。」
テツが
「俺もここに来た時はそんな感じだった。
人生ってある日突然ガラッと変わるんだ。」
自分の経験を話した。
新しい生活が始まった。隣同士で暮らして同じ職場に通う。テツは隣の101号室だった。
ディアボラはわりと近いから歩いても行ける。
一緒に出勤する事が多くなった。
「テツさん、ボク着る物がない。
毎日同じじゃダメだよね。」
「ジヌは金はあるのか?」
「仕送りがあるけど少ないよ。
まだ給料もらってないから、厳しい。」
テツはその気持ちがわかる。親元を離れて心細いのは経験済みだ。
「買い物に行こう。」
必要なものを買ってやった。Uクロで簡単なものは揃えたが、仕事着のスーツはテツの物を貸す事にした。体格は似ている。身長もほぼ同じ。
靴を買った。カッコいい靴を何足か。ピカピカに磨くようにシュークリーナーも揃える。
「靴は大事だって凍夜に言われたんだ。
凍夜みたいなナンバーに入れるように。」
部屋に帰ってきて似合いそうなスーツを渡す。テツもホストに慣れてきて衣装は増えていた。
「意外と痩せっぽちだな。俺より細い。」
ジヌは嬉しそうにテツのスーツを着た。ネクタイを選んでやる。
(なんか可愛いなぁ、こいつ。)
「テツさん、ちょっと大きいね。」
「テツ、でいいよ。さんはいらない。」
(袖が少し長いかな。なんか萌え袖だ。)
二人で食事を作る。狭いワンルームのキッチンで簡単なものを作る。
コチュジャンの大きい瓶を買ってきた。真っ赤なヤンニョムチキンが出来た。
「美味い!辛い!うまい!」
ジヌの作る辛い料理は美味かった。何故か、ナザレの作ったベーコンエッグを思い出した。
「テツ、辛いの大丈夫か?」
「ああ、限界はあるけどな。」
「なんか新婚夫婦みたいだね。」
触れてはいけないことを口にしてしまった。
「ジヌ、荷物少ないな。
国から持って来なかったのか。」
「え、あ、うん。」
家の事を聞くと気まずい雰囲気になる。
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