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第123話 愛の印
「傑は背中一面にこの龍を和彫りで入れたんだ。
僕だけのために。」
レオンは幸せそうに話してくれた。
ゲイカップルは誓いの刺青を入れる事は多いらしい。
「でも、心変わりしないの?
もう,消せないじゃない。」
余程の決心だろう。ジヌはちょっと心惹かれた。
テツは刺青なんか入れて相手にドン引きされたらみじめだ、と思った。
(俺はこれで失敗しそうだ。とことん信じられる相手ならいいかもな。)
ホストの時のテツはスマートでカッコいい。
でも、恋愛には自信がない。
テツは、レオンから今では伝説になったあの合同結婚式の話を聞いて、羨ましく思った。
みんなの前で誓う。みんなに認められたい。
普通のカップルも、結婚式を挙げるのは一つの縛りなんだろう。その縛りが羨ましい。
(俺もジヌを縛りたい。もうどこへも行くな、と俺だけのものにしたい。)
ジヌが知ったら、テツから離れていくかもしれない。誰でも束縛されるのはいやだろう。
テツはこの恋に自信が持てない。それでも想いは募る。
客とアフターで食事に行く事は多いが、帰って来るとこの頃はジヌが部屋に来て、自然と一緒に過ごすことが多くなった。
風呂に入る。もちろん別々に。そして簡単な夜食を食べたり、ワインを飲んだりして過ごす。
疲れてベッドで眠る。一緒のベッドも当たり前になった。腕枕にも慣れた。テツの左側はジヌの場所だ。
今夜は少し興奮している。温かいジヌの身体を抱いて眠る。
「ジヌは少し体温が高いね。気持ちいい。」
ジヌは身体をこちらに向けて
「テツ、キスして。大人のキス。」
もう誰も止められない。激しく唇を吸った。
「あ、ふっ、テツ、欲しい。」
今までどうして我慢出来たのだろう。舌を絡ませる本気のキス。
柔らかいジヌの髪に指を入れて頭を抱えこむ。上になって激しいくちづけ。
「ジヌ、離したくない。」
狂おしく抱きしめる。本能のままに身体を弄る。
「抱いていいか?」
パジャマも下着も脱がせて、生まれたままの姿になって肌を合わせる。
愛しさが込み上げてくる。誰もがみんな思うのだろう。
「俺だけのものにしたい。」
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