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第124話 初めての夜
ジヌは初めてのようだ。今までセックスをした事がないという。まして男同士だ。
テツも男とは経験がない。凍夜に聞いておけば良かった。彼は男も女もベテランらしい。
(いい年をして、やり方がわからないなんて。)
ゲイビデオで見た事しかない。具体的な事はわからない。あれは本当なのか?
ベッドサイドの引き出しからローションとゴムを取った。一応用意はしてある。
「ジヌ、俺下手かもしれないけど、許してくれ。」
「うん、僕もよくわからない。
でも、こうやって抱かれてるだけで嬉しいよ。
あそこが固くなって痛い。触って。」
「ああ、ジヌ、可愛い。」
お互いの身体を弄りながら、抱き合うだけで気持ちいい。
(凍夜が言ってたな、時間をかけろって。
ゆっくり解すんだって。急いじゃダメだって。)
人間の本能でなんとかなるのか、抱き合っているだけでギンギンになってしまった。
ジヌの細い指で握られると、この上なく気持ちいい。ピアノを弾くあの指。
そう思った瞬間、射精していた。
「あ、あっ、あっ。」
腰が震える。ジヌをイカせてやるつもりが、先にイッてしまった。抱き寄せてジヌのペニスを握る。瞬間硬度を増して
「テツ、ぼくもイッちゃう。」
「はあ、可愛い。愛してるよ。」
二人の精液でベッドは酷いことになっている。
シワだらけのシーツに包まって抱き合う。
「あはは、大好き!」
頭を撫でてくちづけする。
「テツのベースを弾く指で触ってもらってるって思ったら、我慢出来なかった。恥ずかしい。」
愛しさが込み上げてくる。お互いに何より大切な楽器の感触で達したのが嬉しかった。
「ジヌ、一生大切にしたい。」
テツの独占欲が顔を出した。
「一生ってすごいね。」
そう、そんな保証はどこにもない。
風呂に入ってお互いに泡だらけになりながら抱き合う。こんな事が楽しい。タオルで抱き取ってソファにそっと寝かせて、ベッドシーツを新しいものと替えた。
もう一度抱き取ってベッドに寝かせる。裸のジヌにもう欲情している。
華奢な手がそれを握る。
「あっ、ダメだよ。俺ってやり過ぎだろ。
ジヌに呆れられちゃうな。」
「僕もこんなになってるよ。触って。」
お互いの固いものを握り合って口でする。
「あ、恥ずかしい。」
(女みたいだな。)
テツは一瞬そんな事を思った。
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