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第125話 隠し切れない

 ああ、ついにジヌとセックスをした。挿入しなければ、したことにならないのか。よくわからない。  最後までは出来なかったが、そんな事は何でもない。こんなに愛しくさせて、また、別れてしまうのか。テツは不安になった。  愛を確かめ合ったそばから不安が立ち上がる。誰かを完全に自分のものにする事は出来ない。  テツは子供じみた独占欲に縛られている。 「ジヌ、俺の事、好きか?」 「うん、もちろん。」 「ずっと一緒にいてくれるかい?」 「うん、絶対に離れないよ。」 「愛に絶対なんてないんだ。」 テツはイラッとした。ジヌは何も悪くない。意地悪な事を言っているのはテツだ。  夜になると『ディアボラ』に出勤だ。一緒に行く。ゆっくり歩いて行くことにする。  早速、ジヌに指名が入った。テツにも指名が入った。別々のお客さん。  この所ジヌを気に入ってくれている韓国料理の『オンマの店』のオーナー。年配だが美人のアミさん。 「いらっしゃいませ。 アミさんご指名ありがとうございます。」 「ジヌシ、今日は私の甥っ子を連れて来たよ。 学生なんだけど、イケメンが好きなんだって。」 若い男を連れている。 「初めまして。イ・ソジュンです。 ジヌさん可愛い。俺のタイプだ。」  派手にシャンパンを開けている。ジヌの手を握って離さない。  少し離れた席から様子が見える。テツのお客さんは、この前の『タイニーアイアン』のスタッフの一人、朱莉さんだ。  この前、テツにしきりに「ノンケ?」と聞いてきた女性だった。 「テツがベーシストだと知って凄く興味を持ったのよ。素敵だわ。」 「いやぁ、素敵だなんて、テレるなぁ。」  テツとジヌは離れた席からお互いをチラチラと見てしまう。 (やりにくいなぁ。)  テツはチークダンスに誘われた。朱莉さんがテツにべったり抱きついている。  ジヌは気になりながらも、アミとソジュンの相手をしている。  同じ韓国人だから,と言うわけでもないだろうに、アミさんはこの頃よく指名してくれる。お酒の飲み方も派手だ。 「私、一人で東京で頑張ってるジヌシを応援したいのよ。  ウチのソジュンもイケメンでしょ。 脱ぐと凄いモムチャンなのよ。」  じっと見つめるソジュンにただならぬものを感じた。 「ジヌシ、この子はバイ、なのよ。 あなたもいけるんじゃないか、と思って。」

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