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第126話 新たな出会い?

 ジヌは背中がゾクっとした。いやな汗が出る。 ソジュンは素敵だけど、今のジヌにはテツしか見えない。手を握られてるのも苦痛だった。  アミにはジヌの他にもお気に入りがいる。ホストの先輩のジンだ。指名したので隣に座って話し込んでいる。 ソジュンが、 「今日は、終わったら、俺のマンションに来ないか?」 さっきから耳元で囁く。 「僕、帰らないと。アフターは無理です。」 「俺の筋肉を触って欲しかったなぁ。 大胸筋には自信があるんだよ。」 「ごめんなさい。 あの,犬が、犬がいるんです。ご飯をあげないと。」 「へぇ、犬はなんて名前?」 「え?ジョンス、ジョンスです。」 「犬種は?」 「え、と、ワイマラナーです。 僕にしか懐かないので、帰らなくちゃ。」 「凄いの飼ってるんだね。」  先生の飼ってた犬を思い出しながら、必死に答えた。先生の死んだペットの犬。 (僕は嘘が下手だ。 ホストは嘘つきになれ、って凍夜が言ってた。)  テツは酔っ払った朱莉さんを送らなければならなくなった。  黒服のキムから伝言が来た。 「僕はミコトと一緒に凍夜に送ってもらうよ。」 キムにことづけを頼んだ。キムは先輩だが黒服がいい、と今では黒服になってしまった。売り上げの競争もないから気楽だという。  ジヌは競争なんて意識した事はない。店自体がゆるい感じでピリピリした競争は無い。レオンのような圧倒的なナンバーワンがいるから誰もライバル心を持たない。 「それでいいのよ。 競争なんかしたら、品位が落ちるわ。」 いつもオーナーの菫ちゃんが言っている。  アミとソジュンが帰って行った。あまりしつこくされなくてホッとした。  テツは、タクシーで朱莉さんを送って行った。朱莉さんは横浜だと言っていた。戻って来るのは深夜だろう。 「ジヌ、おめでとう。 ついにテツと結ばれたんだろう。」 凍夜に言われて真っ赤になってしまった。 「わかりますか?」 「うん、顔に書いてあるよ。」 ミコトもうなずいている。 「やだなぁ、恥ずかしい。」 「大きいベッド買わなくちゃ、だな。」 「そんな恥ずかしい事、言わないでくださいよ。」  

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